もどる

腎透析科
研究と業績

論文・学会発表

再生医療によるシャント治療

臨床研究の概要

 血液透析を行うために必要なシャント血管を作成するためには、もともと体にある血管を利用することが望ましいのですが、様々な理由で自分の血管ではシャントが作成できないことがあります。このような場合には合成繊維や合成樹脂を素材とした人工血管を用いてシャントを作成することが必要となります。しかし、人工血管は①感染を起こしやすい、②長期間使用すると劣化する、③閉塞しやすい、という短所があります。また、作成したシャント血管が狭くなった場合は風船の付いたカテーテルを血管内に入れ、狭い部分(狭窄部位)を拡張する方法(PTAと呼びます)が一般的です。しかし、PTAは、①治療する際に強い痛みを伴う、②繰り返し治療が必要である、という短所があります。

 私たちは国立循環器病研究センター医工学材料研究室(室長:中山泰秀博士)との共同研究で、「生体内組織形成術を用いて作成した代替血管(バイオチューブ)」をシャント治療に応用し、臨床研究を行っています。この方法は、人工血管の短所(感染を起こしやすい、劣化する)を補い、またPTAとは違い、繰り返し治療を行わずにシャント狭窄を治癒させることが期待されます。現在、2人の患者さんのシャント狭窄の治療に成功し良好な結果を得ております。

 

治療の方法

① まず、鋳型を皮膚の下に局所麻酔で埋め込み1~2ヶ月待機します。

埋め込み前の鋳型

② 鋳型の中にはコラーゲン組織でできたバイオチューブができています。

③ このバイオチューブを用いて、狭くなったシャント血管をバイパスします。

赤矢印がバイオチューブ
バイオチューブ手術1ヶ月後

④ 1ヶ月後のシャント血管の造影写真を見ると、バイパスしたバイオチューブ内を
  血液が綺麗に流れていることがわかります。

赤矢印:バイオチューブ
黄矢印:狭くなったシャント血管

 将来的には、自分の血管でシャントを作成できない患者さんにバイオチューブを用いてシャントを作成する臨床研究を行うことを検討しています。

ページの先頭へ