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令和6年度(2024年度) 天理よろづ相談所病院 病院指標

 

病院指標

  1. 年齢階級別退院患者数
  2. 診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)
  3. 初発の5大癌のUICC病期分類別並びに再発患者数
  4. 成人市中肺炎の重症度別患者数等
  5. 脳梗塞の患者数等
  6. 診療科別主要手術別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)
  7. その他(DIC、敗血症、その他の真菌症および手術・術後の合併症の発生率)

 

医療の質指標

  1. リスクレベルが「中」以上の手術を施行した患者の肺血栓塞栓症の予防対策の実施率
  2. 血液培養2セット実施率
  3. 広域スペクトル抗菌薬使用時の細菌培養実施率
  4. 転倒・転落発生率
  5. 転倒転落によるインシデント影響度分類レベル3b以上の発生率
  6. 手術開始前1時間以内の予防的抗菌薬投与率
  7. d2(真皮までの損傷)以上の褥瘡発生率
  8. 65歳以上の患者の入院早期の栄養アセスメント実施割合
  9. 身体的拘束の実施率

 

 

1.年齢階級別退院患者数

年齢区分 0~ 10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~ 70~ 80~ 90~
患者数 827 235 325 443 560 1,345 2,308 5,136 3,506 601

 

 2024年度に当院を退院された患者さんを、10歳刻みの年齢階級別に集計したものです。
 60歳以降の年代の方が多く、全体の7割を占めています。この年代の方々は複数の疾患を持っておられたり、重症化しやすいといった特徴があります。

 

2.診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)

 

小児科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
080270xxxx1xxx 食物アレルギー-処置1:あり 106 1.04 2.10 0.00% 2.52
040100xxxxx00x 喘息-処置2:なし-副病:なし 94 5.98 6.38 0.00% 4.33
040090xxxxxxxx 急性気管支炎、急性細気管支炎、下気道感染症(その他) 58 6.50 6.22 3.45% 1.21
0400801199x0xx 肺炎等(1歳以上15歳未満)-手術なし-処置2:なし 57 5.98 5.61 0.00% 5.35
080270xxxx0xxx 食物アレルギー-処置1:なし 40 1.03 2.52 0.00% 3.13

 

 当院小児科は、「子どもの総合医」として一般小児科診療を主体に、アレルギー疾患、免疫疾患、神経疾患、遺伝疾患、代謝内分泌疾患、心臓疾患などの専門診療を行っております。

 一般小児科診療においては、対象となる疾患の大部分は気道感染症や気管支喘息発作です。上気道炎(いわゆる風邪)は軽症であることが多く外来診療で対応可能であることが多いですが、数は多く時に入院が必要な方もおられます。一方肺炎や気管支炎、細気管支炎といった下気道炎/下気道感染においては、感染・炎症が重篤化したり呼吸障害を来すことも多く、高頻度で入院が必要となります。また、気管支喘息発作も多くは気道感染を契機とし、呼吸障害を来して入院します。中には下気道感染症と合併したり、両者の区別が困難な患者さんもおられます。このような状況を反映し、常に当科入院患者の上位が、上・下気道感染および気管支喘息で占められています。

 院内で出生した新生児のうち集中治療を要さない疾患に対しては当院で治療を行なっており、常に一定数の入院があります。また当院小児科では現在、常勤の小児アレルギー専門医と小児神経専門医により、入院による食物アレルギー負荷検査や神経疾患の専門検査・治療を積極的に行なっています。このため食物アレルギーやてんかんを主病名とする入院が増えてきています。

 

 

消化器外科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
060160x001xxxx 鼠径ヘルニア(15歳以上)-ヘルニア手術 鼠径ヘルニア等 103 5.15 4.54 0.00% 72.47
060035xx0100xx 結腸(虫垂を含む。)の悪性腫瘍-結腸切除術 全切除、亜全切除又は悪性腫瘍手術等-処置1:なし-処置2:なし 76 15.15 14.81 1.32% 73.59
060330xx02xxxx 胆嚢疾患(胆嚢結石など)-腹腔鏡下胆嚢摘出術等 72 7.53 5.99 0.00% 67.44
060335xx0200xx 胆嚢炎等-腹腔鏡下胆嚢摘出術等-処置1:なし-処置2:なし 65 9.05 7.05 1.54% 69.69
060020xx02xxxx 胃の悪性腫瘍-胃切除術 悪性腫瘍手術等 55 25.89 18.48 1.82% 73.47

 

 鼠径とは、足のつけね(鼠径部)のこと、「ヘルニア」とは、体の組織が正しい位置からはみ出した状態を示しており、鼠径ヘルニアとはいわゆる脱腸のことであります。

 鼠径ヘルニアを放置すると時に腸がはまりこんで抜けない状況になることがあり、腸閉塞や腸管虚血壊死に至ってしまうことがあります。鼠径ヘルニアと診断された場合、放置して治ることはありませんので、手術をお勧めします。手術ではヘルニア嚢を処理し、弱くなった腹壁の筋膜をメッシュと呼ばれる人口補強材で補強しますが、従来の前方からの修復法に加え、腹腔鏡を用いた手術方法も多く行っております。

 結腸癌・直腸癌を含めた大腸癌は早期癌・進行癌ともに年々増加しています。当院では毎週内科・外科でカンファレンスを行い、大腸癌治療のガイドラインに基づいて適切な治療方針を決めています。進行癌や内科的治療の適応外と判断された場合は手術を行います。基本的には腹腔鏡で手術を行っていますが、最近はロボット支援下に行う手術も増えております。腸閉塞症状をおこした進行癌の場合は緊急で開腹手術を行うこともあります。

 胆嚢結石症は、胆石発作や胆管炎などを起こした場合、手術適応となり、精査の後、待機的に腹腔鏡下胆嚢摘出術を行います。また急激な腹痛で急性胆嚢炎と診断された場合には、炎症早期に緊急手術を行う方針としております。胆嚢摘出術は多くの場合、腹腔鏡で切除に向かいますが、腹腔内の癒着が高度である場合や、炎症が強く、大事な構造物が存在する肝門部の剥離操作が困難な場合には開腹手術に移行することがあります。

 胃癌は、大腸癌と同様に、毎週内科・外科で行う合同カンファレンスで、胃癌治療のガイドラインに基づいて適切な治療方針を決めています。切除は腹腔鏡を用いた手術を基本としていますが、大腸癌同様、最近はロボットを用いた手術が増えております。一方、膵浸潤や十二指腸浸潤があるような高度進行症例では開腹で手術を行い、時に拡大手術を行うことがあります。

 

 

整形外科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
07040xxx01xxxx 股関節骨頭壊死、股関節症(変形性を含む。)-人工関節再置換術等 50 17.60 18.76 68.00% 71.48
070230xx01xxxx 膝関節症(変形性を含む。)-人工関節再置換術等 46 17.96 21.38 71.74% 76.83
160800xx02xxxx 股関節・大腿近位の骨折-人工骨頭挿入術 肩、股等 29 21.21 25.29 68.97% 82.28
070343xx01x0xx 脊柱管狭窄(脊椎症を含む。) 腰部骨盤、不安定椎-脊椎固定術、椎弓切除術、椎弓形成術(多椎間又は多椎弓の場合を含む。) 前方椎体固定等-処置2:なし 26 22.89 19.60 23.08% 71.15
070341xx020xxx 脊柱管狭窄(脊椎症を含む。) 頸部-脊椎固定術、椎弓切除術、椎弓形成術(多椎間又は多椎弓の場合を含む。) 前方椎体固定等-処置1:なし 24 27.63 19.40 20.83% 71.50

 

 整形外科では頚椎症、腰部脊柱管狭窄症などの脊椎疾患、股関節・膝関節疾患、高齢者の大腿骨・股関節骨折に対する手術を中心とした診療を行っております。手術後は早期にリハビリテーション施設への転院をはかり、在院日数を短縮して多くの患者さんに対応できるようにしています。

 

 

形成外科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
020230xx97x0xx 眼瞼下垂-手術あり-処置2:なし 26 3.19 2.74 0.00% 76.23
070010xx970xxx 骨軟部の良性腫瘍(脊椎脊髄を除く。)-手術あり-処置1:なし 18 3.72 4.65 0.00% 55.11
160200xx030xxx 顔面損傷(口腔、咽頭損傷を含む。)-鼻骨骨折整復固定術等-処置1:なし 11 3.27 3.31 0.00% 15.73
080006xx97x0xx 皮膚の悪性腫瘍(黒色腫以外)-その他の手術あり-処置2:なし 9.28
080006xx01x0xx 皮膚の悪性腫瘍(黒色腫以外)-皮膚悪性腫瘍切除術等-処置2:なし 6.92

 

  1. 加齢による眼瞼下垂症に対する手術は2種類あります。一つは余剰皮膚切除で、重瞼部または眉毛下の皮膚切除を行います。もう一つは挙筋前転術で、重瞼部の皮膚切除に加えて、挙筋腱膜を剥離・前転して瞼板に縫合固定します。基本的には入院となりますが、日帰り手術も可能です。
  2. 良性軟部腫瘍で多いのは脂肪腫です。大きくなってから受診されることが多いので、入院手術となる場合が多いですが、小さいものは日帰り手術も可能です。
  3. 顔面骨骨折では、鼻骨骨折、頬骨骨折、眼窩壁骨折が多いです。CT検査で骨偏位が大きい場合や、眼球症状が強い場合に手術を行います。多くの場合、全身麻酔下での手術が必要です。
  4. 皮膚悪性腫瘍で多いのは、基底細胞癌と有棘細胞癌です。大きい腫瘍や発生部位が眼瞼や鼻の場合は、切除によって生じた欠損部の再建手術が必要となります。

 なお当科では自費での美容外科診療は行っておりません。

 

 

脳神経外科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
010040x099000x 非外傷性頭蓋内血腫(非外傷性硬膜下血腫以外)(JCS10未満)-手術なし-処置1:なし-処置2:なし-副病:なし 53 18.43 18.68 71.70% 69.85
160100xx97x00x 頭蓋・頭蓋内損傷-その他の手術あり-処置2:なし-副病:なし 51 6.65 9.83 7.84% 78.61
010060xx02x2x3 脳梗塞-経皮的脳血管形成術等-処置2:2あり-脳卒中発症3日目以内 38 24.63 27.47 65.79% 80.68
160100xx99x00x 頭蓋・頭蓋内損傷-手術なし-処置2:なし-副病:なし 31 7.61 7.99 22.58% 75.16
010040x199x0xx 非外傷性頭蓋内血腫(非外傷性硬膜下血腫以外)(JCS10以上)-手術なし-処置2:なし 30 26.00 22.21 73.33% 77.30

 

 脳神経外科で取り扱う疾患には、くも膜下出血、脳梗塞、脳出血に代表される脳血管障害や、脳腫瘍、頭部外傷、脊椎脊髄疾患、さらには水頭症、顔面けいれん、てんかんなどの機能的神経疾患があります。

 近年、急性期脳梗塞に対するrt-PA(アルテプラーゼ)静注療法および経皮的脳血栓回収術が確立され、その適応が拡大しています。これまで点滴加療しか行えなかった患者様に対し、積極的な再灌流療法を行うことで、良好な予後となる症例が増加してきました。当院では一次脳卒中センターコア施設の認定を受け、「断らない脳卒中救急」という信念のもと、救急車の受け入れを積極的に行っています。そのため、脳血管障害の割合が最も多くなっていると思われます。

 手術別患者数頻度3位は脳動脈瘤に対する脳血管内手術です。脳動脈瘤はくも膜下出血の原因となる疾患で、いったん出血してしまうと予後が良くありません。動脈瘤が大きい、不整形、破裂しやすい部位では予防治療をお勧めしています。開頭顕微鏡下手術(脳動脈瘤頚部クリッピング術)と脳血管内手術を症例に応じて選択していますが、最近は網目の細かなステント(フローダイバーターステント)や、袋状になったデバイス(ウーブン・エンドブリッジデバイス:WEB)などが使用できるようになりました。脳血管内治療で対処できる症例が増えています。

 頻度順4位は開頭脳腫瘍摘出術です。病院設立の当初より数多くの脳腫瘍手術を行ってまいりました。顕微鏡下手術に術中神経機能モニタリング、ナビゲーションシステム、術中エコー、神経内視鏡などを併用し、正常組織を損傷することなく安全かつ迅速な腫瘍の摘出を目指しています。

 頻度順5位は、頚動脈狭窄症に対する頚動脈ステント留置術です。当院では脳血管障害の患者様が多く、頚部や脳血管評価で狭窄や閉塞病変を見つけることがあります。まずは危険因子(高血圧、高脂血症、糖尿病など)の是正に努め、適応に応じて経皮的頚動脈ステント留置術、頚動脈内膜剥離術、バイパス術をお勧めしています。

 

 

呼吸器外科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
040040xx02x0xx 肺の悪性腫瘍-肺悪性腫瘍手術 肺葉切除又は1肺葉を超えるもの等-処置2:なし 169 8.45 9.82 0.00% 72.38
040200xx01x00x 気胸-肺切除術等-処置2:なし-副病:なし 17 8.00 9.59 5.88% 43.18
040040xx97x00x 肺の悪性腫瘍-その他の手術あり-処置2:なし-副病:なし 11 7.00 11.12 0.00% 70.00
040010xx01x0xx 縦隔悪性腫瘍、縦隔・胸膜の悪性腫瘍-縦隔悪性腫瘍手術等-処置2:なし 8.41
040040xx01xx0x 肺の悪性腫瘍-肺悪性腫瘍手術 隣接臓器合併切除を伴う肺切除等-副病:なし 16.12

 

 呼吸器外科ではDPC分類の最も多い症例は肺悪性腫瘍の手術となっています。肺悪性腫瘍のうち、原発性肺癌手術に関しては、術前検査にて進行度を見極めた上で、病期Ⅰ、Ⅱ期を絶対的適応としますが、縦隔リンパ節転移陽性等の局所進行肺癌症例に対しては、呼吸器内科、放射線科とも連携して、化学療法や放射線療法を併用した集学的治療も行っています。転移性肺腫瘍に関しては、原則として原発病巣がコントロールされ、かつ他臓器に転移がなく、肺転移病巣が数箇所以内で完全切除が可能な場合に手術を行います。切除方法は部分切除などの縮小手術が原則です。

 2番目に多い症例は気胸です。気胸とは肺の表面に穴が開いて、肺が縮んでしまう病気です。肺に基礎疾患を有していない特発性気胸と、基礎疾患を有する続発性気胸に分類されます。原則的に安静や脱気・ドレナージ治療後の再発症例を対象に手術を行っていますが、両側同時発症や反対側の気胸の既往がある場合などは、初回発症でも手術を行います。殆どの症例で小切開による胸腔鏡下手術が行われています。

 3番目に多い症例は縦隔・胸膜腫瘍です。縦隔腫瘍の中では胸腺腫や胸腺癌などの胸腺腫瘍に対する摘出術が最も多く行っています。その他、神経原性腫瘍などの良性腫瘍や胸腺嚢胞、気管支原生嚢胞などの嚢胞性腫瘍の手術を行っています。

 

 

心臓血管外科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
050080xx0101xx 弁膜症(連合弁膜症を含む。)-ロス手術(自己肺動脈弁組織による大動脈基部置換術)等-処置1:なし-処置2:あり 55 21.71 20.84 5.45% 70.38
050161xx01x1xx 大動脈解離-大動脈瘤切除術(吻合又は移植を含む。) 上行大動脈及び弓部大動脈の同時手術等-処置2:1あり 40 26.95 29.35 32.50% 72.30
050163xx01x1xx 非破裂性大動脈瘤、腸骨動脈瘤-大動脈瘤切除術(吻合又は移植を含む。) 上行大動脈及び弓部大動脈の同時手術等-処置2:1あり 35 24.71 27.01 34.29% 73.06
050163xx03x1xx 非破裂性大動脈瘤、腸骨動脈瘤-ステントグラフト内挿術-処置2:1あり 34 16.18 14.96 11.76% 81.09
050163xx02x1xx 非破裂性大動脈瘤、腸骨動脈瘤-大動脈瘤切除術(吻合又は移植を含む。) 腹部大動脈(分枝血管の再建を伴うもの)等-処置2:1あり 29 15.90 18.74 0.00% 71.66

 

 ⼼臓⾎管外科においてDPC分類で3~5番目に多い症例は全て非破裂性大動脈瘤の患者さんでした。また第2番目に多い治療も大動脈解離でした。2022年秋より奈良県内で唯一の大動脈センターを開設しており、大動脈疾患が増加傾向にあります。

 治療法として人工血管置換術が多く、次いでステントグラフト内挿術が続きました。基本的には確実な人工血管置換術を行いますが、開胸や開腹手術が困難な患者さんに対しては、低侵襲であるステントグラフト内挿術を行っています。大動脈解離疾患のうち、急性大動脈解離は緊急手術を必要としますが、当院では心臓血管外科独自のホットラインを確立しており、他病院、救急隊員からの直接の受け入れ依頼に対して断ることなく受け入れが可能な体制にあることが手術件数の増加につながっていると推察されます。

 1番多い治療は弁膜症でした。高齢者を中心として手術治療を必要とする弁膜症症例は増加傾向にありますが、近年は若年患者さんも受診されるようになりました。これは低侵襲である胸腔鏡補助下での小開胸手術を行っているためと推察されます。

 

 

産婦人科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
12002xxx01x0xx 子宮頸・体部の悪性腫瘍-子宮悪性腫瘍手術等-処置2:なし 46 11.22 9.84 0.00% 59.07
12002xxx99x40x 子宮頸・体部の悪性腫瘍-手術なし-処置2:4あり-副病:なし 46 3.41 4.07 0.00% 65.02
120070xx02xxxx 卵巣の良性腫瘍-卵巣部分切除術(腟式を含む。) 腹腔鏡によるもの等 45 6.31 5.97 0.00% 50.96
120220xx01xxxx 女性性器のポリープ-子宮鏡下有茎粘膜下筋腫切出術、子宮内膜ポリープ切除術 34 3.15 2.72 0.00% 52.82
120060xx02xxxx 子宮の良性腫瘍-腹腔鏡下腟式子宮全摘術等 31 5.97 5.88 0.00% 46.35

 

 当科では婦人科における良性腫瘍、悪性腫瘍の治療ならびに産科における分娩を行なっています。婦人科良性腫瘍では、ロボット支援下手術を始めとした低侵襲な腹腔鏡下手術を積極的に取り入れています。悪性腫瘍においても、初期子宮体癌ではロボット支援下の腹腔鏡下手術を積極的に取り入れています。悪性腫瘍の治療では、手術の他に抗がん剤や分子標的薬を用いる化学療法を積極的に行なっており、治療薬の種類や患者さんのご希望に応じて外来または入院での化学療法を選択して頂いております。

 

 

眼科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
020110xx97xxx0 白内障、水晶体の疾患-手術あり-片眼 467 2.94 2.49 0.00% 73.94
020110xx97xxx1 白内障、水晶体の疾患-手術あり-両眼 415 4.94 4.29 0.00% 75.47
020220xx97xxx0 緑内障-その他の手術あり-片眼 149 6.58 4.52 0.00% 71.95
020160xx97xxx0 網膜剥離-手術あり-片眼 143 9.25 7.53 0.00% 57.20
020200xx9710xx 黄斑、後極変性-手術あり-処置1:あり-処置2:なし 68 6.27 5.47 0.00% 67.99

 

 当科では手術を目的として来院される事が多く、白内障手術の相談に来院される事が多くなっています。日常生活に不自由を感じた時点で手術を行う事が、望ましいと考えています。白内障手術は日帰りおよび入院で手術を行っています。

 失明原因の第一である緑内障を多く診断、治療を行なっているのが当科の特徴です。点眼による通院治療では十分に視野の進行を止められなくなった症例に対しては、手術療法を行っています。

 黄斑前膜、黄斑円孔、黄斑分離症などの黄斑疾患に対して積極的に診断治療を行っています。最新のOCTやHRAなどの機器を揃えて的確な診断治療を目指しています。極小切開で行う手術法(MIVS)で術後の早期退院や視力回復を目指しています。緊急性のある網膜剥離に対しては積極的に受け入れて、緊急手術を行っています。

 

 

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
030350xxxxxxxx 慢性副鼻腔炎 77 7.64 5.84 0.00% 59.78
030150xx97xxxx 耳・鼻・口腔・咽頭・大唾液腺の腫瘍-手術あり 67 6.75 6.68 0.00% 60.18
030440xx01xxxx 慢性化膿性中耳炎・中耳真珠腫-鼓室形成手術等 46 6.96 6.06 0.00% 59.67
100130xx97x0xx 甲状腺の良性結節-手術あり-処置2:なし 38 7.13 7.05 0.00% 62.97
100020xx010xxx 甲状腺の悪性腫瘍-甲状腺悪性腫瘍手術 切除(頸部外側区域郭清を伴わないもの)等-処置1:なし 35 7.97 7.90 0.00% 58.37

 

 耳鼻咽喉科・頭頸部外科でのDPC分類の多い疾患は、1位は慢性副鼻腔炎、2位は耳・鼻・口腔・咽頭・大唾液腺の腫瘍、3位は慢性化膿性中耳炎・中耳真珠腫、4位は甲状腺の良性結節、5位は甲状腺の悪性腫瘍、となっていました。奈良県全般および三重県伊賀地方の耳鼻咽喉科・頭頸部外科内の基幹病院として病院・診療所からの信頼も厚く、多くの入院手術治療を行っています。

 頭蓋骨には頬部、両目の間、額の奥に副鼻腔とよばれる空洞(上顎洞、篩骨洞、前頭洞、蝶形骨洞)がありますが、慢性副鼻腔炎とはこの部位に慢性の炎症を来す疾患です。症状は鼻汁(特に膿性鼻汁)、鼻閉、顔面や眼周囲の痛み・違和感などですが、近年は好酸球性副鼻腔炎と呼ばれるタイプが増加しています。好酸球性副鼻腔炎では鼻閉や嗅覚障害が強く出現します。重症化すると、視力低下や複視といった眼の症状や髄膜炎などの脳の炎症をきたす場合もあります。軽症例は薬などで改善しますが、保存治療で改善しない場合や重症例では手術が必要となります。手術は基本的に鼻の孔から内視鏡をつかって行い、術中ナビゲーションを用いて安全に行います。鼻茸とよばれるポリープを切除し、副鼻腔を細かく分ける骨の隔壁を除去して換気を良くします。術後は必要に応じて点鼻、投薬、鼻洗浄を行っていきます。好酸球性副鼻腔炎は体質による影響も大きく、再発した場合は分子標的薬とよばれる注射薬を使う場合もあります。

 耳・鼻・口腔・咽頭・大唾液腺など耳鼻咽喉科・頭頸部外科で扱う領域に発生した腫瘍は、良性であっても機能障害をきたしたり悪性化することがあり、大部分は手術加療が必要です。その中でも当科では唾液を分泌する唾液腺(耳の前~下にある耳下腺、下顎骨の裏にある顎下腺など)から発生する腫瘍の手術を多く手掛けています。耳下腺腫瘍では、顔の表情を作る神経が腺内を走行しているため耳の前から頸部にかけて大きく皮膚切開するのが一般的ですが、当科では大部分の症例で耳の後ろから頸部にかけて目立ちにくい皮膚切開を行っています。顔面神経は手術中に筋電図を確認する神経モニタ装置を使用し、安全で合併症の少ない手術を行っています。これらの部位には悪性腫瘍が生じることもありますが、当科は日本頭頸部外科学会頭頸部がん専門医指定研修施設であり、進行した腫瘍であっても欠損した組織の再建を伴う拡大手術、化学療法(抗癌薬)を併用した放射線治療、さらには最新のロボット手術や光免疫療法、分子標的薬治療などを組み合わせて対応しています。

 慢性化膿性中耳炎は鼓膜に穴が開いた状態で、主な症状は、難聴と耳漏です。しっかり治すには手術が必要ですが、鼓膜の穴をふさぐだけで良くなる場合(鼓膜形成術)と骨を削開して深部の病変を除去する必要がある場合(鼓室形成術)があります。中耳真珠腫は鼓膜の⼀部が陥凹して炎症の塊を作り、腫瘍のように増大して周囲の骨を破壊していく疾患です。難聴や耳漏だけでなく、進行するとめまいや重度の難聴、顔面神経麻痺、髄膜炎などの頭蓋内合併症をきたすことがある疾患です。病変を完全に除去する手術(鼓室形成術)が必要となります。当科では症例によって内視鏡や顕微鏡を使い分けて手術しています。中耳真珠腫は脳に近い深い部分や大血管にまで進展することもありますが、このような場合も神経モニタ装置などを用いて安全かつ適切な手術を行っています。

 甲状腺は頸部と胸部の境界付近にある組織で、体を活発に機能させるホルモンを分泌する組織です。当科では、この部位に生じる悪性腫瘍(甲状腺癌)や良性腫瘍(良性結節)について専門性の高い治療を行っています。腫瘍が大きくなったり頸部リンパ節に転移したりして初めて前頸部や側頸部にしこりを触れて受診する方もいますが、検診などで小さい腫瘍が指摘されて紹介受診される方も多くおられます。はじめに超音波エコーで位置と大きさを確認し、さらにはエコーで観察しながら注射針で腫瘍細胞を採取し(エコーガイド下穿刺吸引細胞診)、正確に良性か悪性かを診断しています。悪性腫瘍や、良性であっても大きい場合は手術を勧めますが、その場合も最小限かつ必要な範囲の切除にとどめ機能障害の軽減を目指しており、良好な治療成績を得ています。

 

 

脳神経内科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
010060xx99x20x 脳梗塞-手術なし-処置2:2あり-副病:なし 106 16.01 16.94 40.57% 76.80
010060xx99x40x 脳梗塞-手術なし-処置2:4あり-副病:なし 84 14.00 16.89 44.05% 71.83
010160xx99x00x パーキンソン病-手術なし-処置2:なし-副病:なし 58 11.09 17.95 13.79% 75.66
010230xx99x00x てんかん-手術なし-処置2:なし-副病:なし 34 9.68 6.89 11.76% 61.29
010110xxxxx40x 免疫介在性・炎症性ニューロパチー-処置2:4あり-副病:なし 32 24.69 15.45 21.88% 66.28

 

 脳神経内科では、迅速な対応が必要な急性期脳卒中(主として脳梗塞)から、在宅医療との緊密な連携が必要な神経難病まで、広範な領域の脳神経疾患を担当しています。⼊院疾病では、急性期脳梗塞、パーキンソン病、てんかん,免疫介在性・炎症性ニューロパチーが上位を占めています。当院では脳神経外科と協同して脳卒中センターを運営しており、t-PA⾎栓溶解療法や⾎栓回収療法といった脳梗塞の超急性期治療を行っています。

 神経難病のパーキンソン病では、正確な診断、症状変動期の薬剤調整、合併症の治療、生活指導など個々の患者に対応した治療、ケアが必要になるため⼊院頂いています。

 てんかん重積発作では、初期には集中治療室での加療が必要なことも多く、多くのメディカルスタッフと協力し、治療を行っています。

 免疫介在性・炎症性ニューロパチーでは、寛解導入療法、維持療法が必要で、患者さんに合わせて、免疫グロブリン療法、血漿浄化療法、副腎皮質ステロイド薬などを行っております。

 

 

皮膚科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
080010xxxx0xxx 膿皮症-処置1:なし 17 10.06 12.98 0.00% 66.06
080190xxxxxxxx 脱毛症 3.29
100100xx99x0xx 糖尿病足病変-手術なし-処置2:なし 21.46
161070xxxxx00x 薬物中毒(その他の中毒)-処置2:なし-副病:なし 3.58
080020xxxxxxxx 帯状疱疹 9.33

 

    <li膿皮症:蜂巣炎や丹毒を含む細菌性皮膚・軟部組織感染症です。糖尿病や静脈うっ滞、肥満、足白癬などの基礎疾患を伴うことが多く、再発を繰り返す患者も少なくありません。入院治療では安静、局所処置、抗生物質の全身投与を行い、重症例では耐性菌に応じた薬剤に変更します。通常1〜2週間程度の入院が必要です。
  1. 脱毛症:円形脱毛症などの重症例では、急速な進行や広範囲の脱毛を伴い入院となる場合があります。精神的ストレスの軽減や生活習慣の是正に加え、局所療法やステロイド全身投与を行い、症状の安定を図ります。
  2. 糖尿病足病変:糖尿病患者に合併する壊疽や潰瘍は難治性で、再発や悪化を繰り返しやすい疾患です。当院では足壊疽対策チームを中心に、各科と連携して治療を行っています。生活習慣改善が治療成否に大きく影響し、改善が困難な場合は足切断に至ることもあります。
  3. 薬物中毒(薬疹・中毒疹):薬剤によるアレルギー反応で皮膚症状が全身に拡大することがあります。原因薬剤が特定できる場合は薬疹と診断しますが、不明な場合は中毒疹とされます。重症型では粘膜症状を伴い、ステロイド全身投与を目的に入院が必要です。
  4. 帯状疱疹:高齢者に多く、強い痛みや皮膚症状を伴うことがあります。免疫力低下例や重症例では抗ウイルス薬の点滴治療や疼痛管理を目的として入院します。適切な治療により後遺症(帯状疱疹後神経痛)の軽減を図ります。

 

 

泌尿器科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
110070xx03x0xx 膀胱腫瘍-膀胱悪性腫瘍手術 経尿道的手術-処置2:なし 160 5.79 6.81 0.00% 76.92
110080xx991xxx 前立腺の悪性腫瘍-手術なし-処置1:あり 128 2.62 2.45 0.00% 72.78
110080xx01xxxx 前立腺の悪性腫瘍-前立腺悪性腫瘍手術等 99 12.10 11.11 0.00% 72.91
11012xxx02xx0x 上部尿路疾患-経尿道的尿路結石除去術-副病:なし 78 7.73 5.16 5.13% 67.50
110310xx99xxxx 腎臓又は尿路の感染症-手術なし 44 12.68 13.66 11.36% 76.64

 

 当科では尿路性器癌(前立腺癌、膀胱癌、腎盂尿管癌、腎癌、精巣癌等)、前立腺肥⼤症、副腎腫瘍、尿路結⽯症、尿路通過障害、尿路感染症、⼩児ならびに婦⼈泌尿器科疾患等の治療を行っています。 ⼊院患者の多くは手術を受ける患者さんであり、手術のほとんどは腹腔鏡等の内視鏡で行い、最近ではダヴィンチというロボットを使⽤しての手術も行っています。2022年11月より最新機種のダヴィンチXiを2台導入しました。最近では、腎盂形成術や腎摘除術、腎尿管全摘術といったこれまで腹腔鏡で行っていた術式が、次々とロボット手術の保険適応となったこともあり、当科ではこれまでの腹腔鏡手術の経験を生かして、現在はほとんどの手術をロボット手術にて行っています。現在までに2,000件以上の腹腔鏡手術を行っており、スタッフの多くは腹腔鏡技術認定医で、安全で確実な手術を実践しています。

 当科⼊院患者数の最も多いのは前立腺癌の手術です。これは前立腺全摘除術といって多くは開腹手術で行われていた手術です。ただ当科では2000年1⽉より全国に先駆け腹腔鏡手術を開始し、2014年2⽉からはダヴィンチというロボットを⽤いた腹腔鏡手術を始めています。2時間程度の手術時間で、ほとんど出⾎のない手術が可能となりました。治療成績も開腹手術と⽐べても遜⾊ありません。現在は、神経温存手術を積極的に行っており、その影響か尿失禁も以前の腹腔鏡手術より⼤幅に改善しています。またこれらの実績が評価され2015年7⽉からはダヴィンチの⾒学施設に認定されています。現在では、腎部分切除術もロボットを⽤いて行っており、従来なら腎臓を摘出していたような⽅にも部分切除で腎を温存する事が可能になってきました。

 次に、膀胱癌ですが、ほとんどはTURという内視鏡の手術で行っています。なるべく膀胱は温存しようと考えていますので、膀胱全摘除術は年に10件前後とそんなに多くはありません。ただ膀胱全摘除術する場合にも、ロボットを使⽤した手術を行っています。手術時間は開腹手術と変わらず、出⾎量は少なく、術後の回復も早い⾮常にメリットの多い手術です。膀胱を摘出した場合には、腸管を使って尿路変更を行います。従来は⼩切開による開腹手術で行っていましたが、現在は、この手術もロボットを⽤いて体内で行う様にしています。

 尿路結⽯に対しては内視鏡を⽤いレーザーで砕⽯を行っています。前立腺肥⼤症に対しても内視鏡的にレーザーを⽤いたHoLEPという治療を導⼊しています。前立腺肥⼤症や前⽴腺癌の⽅には⿏蹊ヘルニアを合併する場合が多く⾒られます。このような⽅にもメッシュプラグを⽤いた手術を行っています。

 以上のような外科的な治療だけではなく抗がん剤や分⼦標的薬、オプジーボのような薬剤を⽤いた化学療法も行っており、膀胱癌を始めとする尿路上⽪癌や前立腺癌、腎癌、精巣腫瘍に対して行っています。

 

 

呼吸器内科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
040040xx99040x 肺の悪性腫瘍-手術なし-処置1:なし-処置2:4あり-副病:なし 158 9.56 8.16 0.00% 73.23
040040xx9910xx 肺の悪性腫瘍-手術なし-処置1:あり-処置2:なし 142 3.54 3.03 1.41% 73.72
030250xx991xxx 睡眠時無呼吸-手術なし-処置1:あり 95 2.96 2.02 0.00% 67.07
040081xx99x0xx 誤嚥性肺炎-手術なし-処置2:なし 85 16.86 20.78 15.29% 81.45
040110xxxx10xx 間質性肺炎-処置1:あり-処置2:なし 85 13.13 10.66 0.00% 71.40

 

 呼吸器内科では、肺癌に関する入院が1位と2位となっています。肺癌の診断や治療には高度の専門的診療を要するため、当科への紹介が多くなっているからです。具体的には、1位は肺癌診断後の内科的治療の中心である化学療法(いわゆる抗がん剤)を行うための入院です。2位は、肺癌診断のための検査⼊院(主に気管支鏡検査)です。

 3位は,睡眠時無呼吸症候群の確定診断のための検査入院です。社会的にも非常に関心の高い疾患です。検査を希望される方、また必要な方は増加の一途をたどっています。当院では、入院検査枠を大幅に拡充し、入院待機時間の短縮を図っております。

 4位には、高齢化社会を反映して、誤嚥性肺炎が入っています。患者数も多いですが、同一患者さんが繰り返し発症することもあり、当科の入院数は、今後も増える見込みです。

 5位は、間質性肺炎に関連する入院です。間質性肺炎の診断、治療、ケアにおきまして、専門性の高い知識と経験が必要なため、奈良県内外から当科への紹介が多くなっております。またときに急性悪化という急を要する病態になることもあり、その場合には救急外来からの緊急入院ということも生じています。

 

 

循環器内科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
050070xx03x0xx 頻脈性不整脈-経皮的カテーテル心筋焼灼術-処置2:なし 390 4.61 4.47 0.26% 70.80
050130xx9900x0 心不全-手術なし-処置1:なし-処置2:なし-他の病院・診療所の病棟からの転院以外 193 15.76 17.33 10.36% 83.11
050050xx0200xx 狭心症、慢性虚血性心疾患-経皮的冠動脈形成術等-処置1:なし、1,2あり-処置2:なし 184 6.34 4.18 1.09% 72.81
050050xx9910xx 狭心症、慢性虚血性心疾患-手術なし-処置1:1あり-処置2:なし 116 4.88 3.07 1.72% 72.13
050210xx97000x 徐脈性不整脈-手術あり-処置1:なし、1,3あり-処置2:なし-副病:なし 115 10.79 9.59 0.87% 80.10

 

 生活様式の欧米化や高齢化にともない、動脈硬化性疾患(心血管系疾患,脳血管障害など)は増加しています。その中でも狭心症・心筋梗塞などの虚血性心疾患や、心臓に生じるリズムの異常である不整脈が増えています。また高齢化社会到来に伴い心不全による入院も増加しています。当科では虚血性心疾患に対する冠動脈造影検査や冠動脈狭窄病変に対する経皮的冠動脈形成術、そして不整脈へのアブレーション治療を数多く行っています。それぞれについて簡単に説明します。

  1. 心房細動経皮的カテーテル心筋焼灼術施行
    正常な心臓は安静時には1秒間に約1回のペースで規則正しく収縮していますが、心房細動とはそんなリズミカルな拍動が失われる代表的な不整脈です。心房細動は高齢化とともに急速に増加している不整脈です。自覚症状として脈の乱れ、動悸、胸部不快があります。放置すると心臓の中に血栓ができて、脳梗塞などの血栓症の原因となります。最近では心房細動もカテーテル・アブレーションで治療可能となっています。高齢の方でも症状の強い場合は治療を行います。カテーテル・アブレーションは、カテーテルという管を心臓内に入れて、不整脈の原因となっている部分に通電を加えて焼灼する治療法で、技術・器具の進歩もあり治療成績が向上しています。
  2. 心不全による入院への検査・治療
    心不全は、心臓のポンプとしての働きが低下し、腎臓や肝臓を含めた主要な臓器に十分な血液を供給することができなくなり、また肺や全身に血液が滞る状態(うっ血)をいいます。心不全の主な原因としては、弁膜症や高血圧、心筋梗塞あるいは心筋症、不整脈といった疾患があります。心不全を悪化させないためには、原因を解明するための検査を行い、適切な治療や対策を早期に行うことが重要です。
  3. 狭心症経皮的冠動脈ステント留置術施行
    心筋を養う冠動脈の内腔が狭くなって、心臓の筋肉に十分な血液が流れなくなる病気を狭心症といいます。心臓に必要なだけの栄養と酸素が不足すると、心筋は正常に働けなくなります。この時に患者さんは胸が締め付けられるような痛みを感じます。これが狭心症の発作です。この流れが悪くなった冠動脈を内側から拡張し血流を改善する方法に冠動脈ステント留置術があります。ステントは拡張することができる網目状の小さな金属製の筒です。ステンレススチールやコバルト合金などの金属でできています。小さなバルーンに取り付けたステントを冠動脈内で拡張し動脈硬化で狭窄を生じた血管壁に押しつけて拡張し血流を回復します。狭心症に代表される虚血性心疾患の治療として確立した方法で、循環器内科でも多くの患者さんに治療を行っています。
  4. 狭心症心臓カテーテル法施行
    狭心症は虚血性心疾患の代表です。虚血性心疾患の診断を正しく行い治療方針をたてるためには冠動脈の状態を正確に評価することが大切です。その方法が心臓カテーテル法です。冠動脈ステント留置術やバイパス手術の適応を判断するためには必須の検査法です。虚血性心疾患の増加にともない、この検査のための入院件数も増加しています。
  5. ペースメーカー移植術
    現時点で徐脈性不整脈を安全かつ確実に治す内服薬はありません。ペースメーカーは心臓の筋肉に電気刺激を与えることで、生体に必要な心収縮を発生させる医療機器です。弱ってしまった心臓の電気システムの一部を機械に代用してもらうペースメーカーが最も安全で確実な治療法となります。

 

 

内分泌内科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
10007xxxxxx1xx 2型糖尿病(糖尿病性ケトアシドーシスを除く。)-処置2:1あり 49 12.98 13.77 6.12% 74.22
100040xxxxx00x 糖尿病性ケトアシドーシス、非ケトン昏睡-処置2:なし-副病:なし 20 10.60 13.07 0.00% 55.05
10007xxxxxx0xx 2型糖尿病(糖尿病性ケトアシドーシスを除く。)-処置2:なし 19 9.63 10.46 0.00% 60.89
100040xxxxx10x 糖尿病性ケトアシドーシス、非ケトン昏睡-処置2:あり-副病:なし 18.63
100180xx99000x/td>

副腎皮質機能亢進症、非機能性副腎皮質腫瘍-手術なし-処置1:なし-処置2:なし-副病:なし 5.35

 

 内分泌内科の専門領域は糖尿病や脂質異常、そして甲状腺をはじめとする内分泌臓器の機能異常などを含む内分泌・代謝疾患です。

 生活習慣病や慢性疾患に類する疾患が中心であることから外来診療が中心となります。入院症例の大多数を占めるのは、2型そして1型糖尿病の血糖コントロールや合併症治療(糖尿病ケトアシドーシス、高血糖高浸透圧症候群、感染症)、そしてインスリンポンプを含む種々のインスリン治療の導⼊や調整を目的とした入院です。この中には、外科系診療科の術前コントロールあるいは化学療法等で使用するステロイドホルモンによる高血糖に対する治療も含まれます。1〜2週間の入院中に、糖尿病療養指導士(CDE)の資格をもったスタッフを中心に糖尿病自己管理教育と療養指導が行われます。最近は、高血圧の原因として副腎腫瘍による原発性アルドステロン症の位置づけが大きくなっており、副腎機能評価や静脈サンプリングを含めたパス入院が増えています。

 

 

救急診療科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
040081xx99x0xx 誤嚥性肺炎-手術なし-処置2:なし 27 14.85 20.78 44.44% 86.37
161060xx99x0xx 詳細不明の損傷等-手術なし-処置2:なし 18 2.44 2.63 0.00% 41.67
110310xx99xxxx 腎臓又は尿路の感染症-手術なし 15 11.27 13.66 6.67% 78.13
161070xxxxx00x 薬物中毒(その他の中毒)-処置2:なし-副病:なし 11 2.64 3.58 9.09% 45.64
0400802499x0xx 肺炎等(市中肺炎かつ75歳以上)-手術なし-処置2:なし 16.40

 

 救急外来受診例のうち、⼊院が必要な症例の多くは、各専⾨科⼊院となりますが、感染症、薬物中毒、アナフラキシーショックの症例は、救急診療科⼊院となる場合があります。

 救急診療科⼊院で最も多いのは誤嚥性肺炎、ついで尿路感染症となっており、肺炎を合わせると、呼吸器感染症がかなりの割合を占めることになります。尿路感染症は、腎盂腎炎や膀胱炎などを含みます。呼吸器感染症、尿路感染症とも、抗菌薬で治療を⾏います。誤嚥性肺炎は細菌が唾液や胃液と共に肺に流れ込んで⽣じる肺炎のことで、⾼齢者に多くみられます。⾼齢の症例が多いため、⼊院期間が⻑くなりがちですが、全国平均と⽐べ当院での在院⽇数はかなり短いといえます。これは、⼊院初期から積極的に地域連携室が関わって、退院後の⽅針を本⼈・ご家族と相談して決めていく体制が整っていることと、早期からリハビリを⾏うようにしていることによるものと考えられます。

 薬物中毒に関しては、状況により精神神経科の併診を⾏うことにより、再発の予防も⼼がけています。

 

 

血液内科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
130030xx99xbxx 非ホジキンリンパ腫-手術なし-処置2:Bあり 45 15.29 12.23 2.22% 70.87
130030xx99x6xx 非ホジキンリンパ腫-手術なし-処置2:6あり 26 16.42 15.67 0.00% 64.19
130010xx97x2xx 急性白血病-手術あり-処置2:2あり 22 39.64 35.63 0.00% 64.32
130030xx97x40x 非ホジキンリンパ腫-手術あり-処置2:4あり-副病:なし 21 23.33 21.02 0.00% 67.95
130030xx99x4xx 非ホジキンリンパ腫-手術なし-処置2:4あり 19 15.05 8.65 0.00% 68.53

 

 血液内科は、血液のがん(急性白血病、慢性白血病、骨髄異形成症候群、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫)、造血不全または難治性の貧血(再生不良性貧血、骨髄異形成症候群の一部)、血小板減少症(特発性血小板減少性紫斑病)などの血液疾患の診療を担当します。

 血液のがんは「造血器腫瘍」ともよばれ、抗がん剤を用いた化学療法が奏功します。最も多い疾患は悪性リンパ腫です。悪性リンパ腫は、ホジキンリンパ腫と⾮ホジキンリンパ腫に分類され、後者はさらにB細胞性とT細胞性に分類されます。一方、低悪性度・中悪性度・高悪性度の3段階に分類したり、リンパ臓器に発生する「節性」とリンパ臓器以外に発生する「節外性」に分類したりします。これらの分類と、ポジトロンエミッショントモグラフィーを用いた病期診断に基づいて治療法を決定します。最も頻度の高い中悪性度B細胞性リンパ腫ではR-CHOP療法(リツキシマブ、シクロフォスファミド、アドリアマイシン、オンコビン、プレドニンの5剤の併用療法)またはオンコビンに換えてポラツズマブベドチンを使用するPola-R-CHP療法、低悪性度B細胞性リンパ腫ではBRまたはBG療法(ベンダムスチン、リツキシマブまたはオビヌツズマブの2剤)を選択することが一般的です。これら化学療法の第1サイクルは入院で実施しますが、第2サイクル以降は外来化学療法室で実施することが一般的です。ご高齢の患者さんには投与量を減量します。高悪性度リンパ腫には多剤を短期間に集中投与する治療法を実施します。中枢神経再発予防のために高用量のメトトレキセートを投与することもあります。再発・難治性や高リスクの患者さんには、自家造血幹細胞移植を併用した高用量化学療法を実施します。ご高齢や全身状態不良等で自家造血幹細胞移植が適応にならない再発・難治性の患者さんには、ポラツズマブベドチンとベンダムスチンを併用したPola-R-CHP療法も選択肢に加わります。CD30抗原が陽性のT細胞性リンパ腫では、抗CD30モノクローナル抗体に腫瘍細胞増殖抑制作用のある薬剤を結合させたブレンキシマブベドチンを使用することもあります。

 多発性骨髄腫は、免疫グロブリンを産生する形質細胞ががん化した疾患で、貧血、骨病変、腎障害、高カルシウム血症などの多彩な症状をきたします。近年、本疾患に対する新薬が次々に開発されました。初発の患者さんには、主に、ボルテゾミブ、レナリドミド、デキサメサゾン、ダラツズマブ、イサツキシマブから、2剤から4剤を組み合わせた治療法を選択します。65歳以下の患者さんには自家造血幹細胞移植を併用して高用量のメルファランを投与します。再発・治療抵抗性の患者さんには、エロツズマブ、ポマリドミド、カルフィルゾミブ、イキサゾミブ、パノビノスタットが、さらに標準的な3種類の薬剤による治療で効果が乏しい場合には抗BCMA/CD3二重特異性抗体であるエルラナタマブ、テクリスタマブが承認されています。これらの治療によって、多発性骨髄腫の治療成績は著しく向上しています。

 その他に頻度の高い疾患は急性白血病です。急性白血病は骨髄性白血病とリンパ性白血病に分類されますが、成⼈では前者が大半です。近年では、骨髄異形成症候群から進展するタイプや、過去の抗がん剤治療や放射線治療が原因で発症する治療関連白血病が増えています。急性白血病の治療は、寛解導入療法と地固め療法によって白血病細胞を根絶することを目標にします。抗がん剤は点滴投与しますが、一部の病型では内服薬を併用します。治療によって寛解状態に至れば、造血は回復し、日常生活・社会生活に支障をきたすことはありません。治療期間中はクリーンルームに収容し、感染症管理・治療などの補助療法を合わせて実施します。一方、白血病細胞が多くない場合やご高齢の患者さんにはアザシチジンとベネトクラクスの組み合わせが奏効することがあります。急性白血病の再発リスクの高い患者さんや、第2寛解期の患者さんに対しては、同種造血幹細胞移植を実施します。移植ドナーは血縁者、非血縁者(骨髄バンク)、臍帯血から選択します。従来、移植ドナーはヒト白血球抗原(HLA)が適合する必要がありましたが、今日ではHLA半合致の血縁ドナーからも安全に移植することができます(ハプロ移植とよばれます)。同種造血幹細胞移植は、血液内科医師だけでなく、全身放射線照射を担当する放射線科医師・技師、日々の看護業務を担当する看護師、免疫抑制剤や抗生物質の調整を担当する薬剤師、社会復帰に向けて身体能力の向上を担当する理学療法士、血液検査や造血幹細胞の保存を担当する検査技師などの多職種の協力がなければ成り立ちません。当院では、造血幹細胞移植治療にかかわる医療者と定期的なカンファレンスを行い、質の高い医療を実践することを常に全員が心がけています。

 

 

消化器内科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
060100xx01xxxx 小腸大腸の良性疾患(良性腫瘍を含む。)-内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術 210 2.05 2.57 0.48% 70.22
060340xx03x00x 胆管(肝内外)結石、胆管炎-限局性腹腔膿瘍手術等-処置2:なし-副病:なし 178 10.17 8.88 4.49% 76.24
060020xx04xxxx 胃の悪性腫瘍-内視鏡的胃、十二指腸ポリープ・粘膜切除術 100 7.16 7.45 0.00% 76.00
060100xx97xxxx 小腸大腸の良性疾患(良性腫瘍を含む。)-その他の手術あり 50 6.30 7.66 0.00% 73.24
060340xx99x0xx 胆管(肝内外)結石、胆管炎-手術なし-処置2:なし 33 8.30 9.45 6.06% 65.55

 

 内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術は、前癌病変および早期癌に対する低侵襲治療です。前癌病変や早期癌の状態で発見された病変が適応で、外来や2日程度の入院で治療を行います。2cmを超える病変には、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を行うことで、大きな病変を外科手術することなく根治することが可能です。こちらは1週間程度の入院です。早期の状態で見つけることで内視鏡的治療による完全切除が可能となるので、積極的に下部内視鏡検査を受けていただきたいと考えます。

 胃の悪性腫瘍に対する内視鏡的切除術もESDを行うことで外科手術することなく根治することが可能です。術後早期から食事が可能で、1週間程度の入院で退院となります。

 胆管結石や胆管炎は以前から多い疾患ですが、高齢化とともに有病率が上昇しています。結石により胆汁の流れが阻害され、さらに細菌感染が併発すると重症化します。抗生剤の点滴に加え、適切な時期に内視鏡を挿入し、胆管内へのチューブ留置や結石除去を行うことで、速やかな病態の改善が期待できます。高齢者や基礎疾患の多い方でも体へ負担少なく治療可能です。

 

 

総合内科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
070560xxxxx00x 重篤な臓器病変を伴う全身性自己免疫疾患-処置2:なし-副病:なし 48 16.52 14.93 12.50% 66.13
110310xx99xxxx 腎臓又は尿路の感染症-手術なし 43 18.79 13.66 16.28% 75.65
040081xx99x0xx 誤嚥性肺炎-手術なし-処置2:なし 35 17.83 20.78 22.86% 84.66
100393xx99xxxx その他の体液・電解質・酸塩基平衡障害-手術なし 34 14.27 9.83 11.76% 79.29
0400802499x0xx 肺炎等(市中肺炎かつ75歳以上)-手術なし-処置2:なし 30 13.43 16.40 20.00% 85.57

 

  1. 誤嚥性肺炎
  2. 尿路感染症
  3. 自己免疫疾患
  4. 電解質異常
  5. 心不全

 最も多い疾患は、自己免疫疾患、一般に膠原病と呼ばれる疾患です。全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、多発性筋炎・皮膚筋炎、全身性血管炎、強皮症などが具体的な疾患名です。膠原病では疾患により、合併する臓器障害も異なるため細やかな治療が必要です。特に最近では、某有名演歌歌手が「抗MDA5抗体陽性筋炎」で亡くなられたのはご存じかと思います。奈良県下では、これらの疾患の診療を展開する病院が少ない中、当院は数少ない専門医療機関の一つとなっています。

 第2の疾患は、尿路感染症です。尿路に細菌が入り増殖して炎症をおこすものです。高齢者の発熱では、肺炎にとともによく見られる疾患です。悪寒戦慄を伴う高熱の原因となります。尿路に異常がある場合は、泌尿器科入院となる場合もありますが、通常は総合内科で入院して治療します。

 第3番目は、誤嚥性肺炎です。高齢者では嚥下機能が低下し、食べ物や唾液などを誤嚥することで肺炎を起こします。加齢による嚥下能力の低下、むせなどの咳反射の低下、口腔の不衛生などが原因です。高齢者の入院の原因となります。

 第4番目は、電解質異常です。人間の体内ではいろいろなものが常に一定の体のバランスを維持しています。これをホメオスターシスといいます。ナトリウム、カリウム、カルシウムなどの電解質もこれにあてはまります。普段は腎臓を中心に維持されていますが、電解質のバランスが崩れると、いろいろな症状があらわれます。ときに意識障害や筋力低、下不整脈など重篤な状態となることもあります。多いのは、高カリウム血症、低カリウム血症、低ナトリウム血症、高カルシウム血症などです。

 最後は、市中肺炎です。市中肺炎とは、普段の社会生活を送っている中で罹患した肺炎のことです。院内肺炎と区別されます。細菌やウィルスが原因です。細菌としては、肺炎球菌、インフルエンザ菌、マイコプラズマなどがあります。今年はマイコプラズマが流行しました。喀痰や血液の培養試験で、原因菌を特定して、適切な抗菌剤を選択して治療します。

 

 

乳腺外科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
090010xx010xxx 乳房の悪性腫瘍-乳腺悪性腫瘍手術 乳房部分切除術(腋窩部郭清を伴うもの(内視鏡下によるものを含む。))等-処置1:なし 86 9.41 9.77 0.00% 64.09
090010xx02xxxx 乳房の悪性腫瘍-乳腺悪性腫瘍手術 乳房部分切除術(腋窩部郭清を伴わないもの) 44 6.14 5.50 0.00% 64.66
090010xx99x0xx 乳房の悪性腫瘍-手術なし-処置2:なし 10 6.20 9.75 0.00% 69.10
090020xx97xxxx 乳房の良性腫瘍-手術あり 3.94
090010xx97x0xx 乳房の悪性腫瘍-その他の手術あり-処置2:なし 6.48

 

 1位から3位は乳癌の手術に伴う入院です。乳癌の治療成績は年々向上しており、全体としては10年生存率が85%程度になっています。標準治療が普及している一方で、患者さんの年齢や合併症、ライフスタイルや価値観などに合わせたより質の高い医療が求められる時代となっています。

 乳腺外科では乳腺疾患(主に乳癌)に対して、専門性の高い医療を提供できるように心がけています。20年前から乳腺外科医、放射線診断医、放射線治療医、形成外科医、病理診断医、細胞検査師、放射線科技師、臨床検査部技師など多職種で形成されるCancer boardを編成しています。毎週カンファレンスを行い、すべての患者対して適切な診断や治療方針を検討しています。

 4位以下は乳房の良性腫瘍に対する手術の入院です。5位は乳癌の再発に対する放射線治療やその他の療養のための入院です。術後の再発予防の化学療法などの薬物療法、乳房温存療法での放射線治療などはほぼすべてが外来通院で行われますが、再発や転移の患者さんは体調不良や痛み、麻痺などのために通院での治療が困難となることがあります。そのようなときには入院で治療を受けていただくことがあります。

 

 

3.初発の5大癌のUICC病期分類別並びに再発患者数

初発 再発 病期分類
基準(※)
版数
StageⅠ StageⅡ StageⅢ StageⅣ 不明
胃癌 103 24 27 19 69 1 8
大腸癌 47 54 42 43 48 2 9
乳癌 50 53 11 15 24 1 8
肺癌 184 29 98 124 10 357 1 8
肝癌 13 10 17 59 2 6

※ 1:UICC TNM分類,2:癌取扱い規約

 胃癌は健診で発見されるものの多くがStageⅠであり、内視鏡手術で切除できるものが多いのも特徴です。

 大腸癌も検診発見例が多いですが、胃癌に比べると早期例が目立って多いわけではありません。胃癌と同様に内視鏡的切除手術の適応が拡大しています。

 乳癌は自己発見も容易なため、早期の段階で治療がなされています。

 肺癌患者数はStageⅠとStageⅣに大きく分かれています。検診発見例ではStageⅠが多く、症状での発見例はStageⅣが多いためです。検診が重要な癌といえます。

 肝癌は初発例よりも再発例の方が際立って多いことが特徴です。これは肝癌が慢性肝炎や肝硬変に合併して起こることが多く、このような肝臓は癌を発生しやすくなっているためです。治療をしても別の個所に再発することが多いです。血管塞栓術や薬物注入など、より侵襲の少ない方法を用いて根気よく治療を続けます。

 

 

4.成人市中肺炎の重症度別患者数等

患者数 平均
在院日数
平均年齢
軽症 28 11.14 54.14
中等症 119 15.31 78.30
重症 42 15.07 82.00
超重症
不明

 

 市中肺炎とは、普段の社会生活を送る中で罹患した肺炎を指します。重症度は日本呼吸器学会の成人市中肺炎診療ガイドラインによる重症度分類システムにて分類しています。

 当院では市中肺炎は中等症以上の患者さんが多く、かつ平均年齢が上がるほど重症度も上がります。これは市中肺炎の罹患率、死亡率の高齢化を反映しており、高齢化社会の重要な疾患です。当院では基礎疾患のある肺炎の患者さんを数多く受け入れています。

 

 

5.脳梗塞の患者数等

発症日から 患者数 平均在院日数 平均年齢 転院率
3日以内 363 19.72 76.25 45.12%
その他 16 20.75 68.06 1.58%

 

 脳梗塞の患者さんについて患者数、平均在院日数、平均年齢、転院率を集計したものです。

 発症3日以内の急性期脳梗塞の患者さんが多数を占めています。脳卒中ケアユニットを開設し24時間体制で診療にあたります。脳梗塞発症からの経過時間が基準を満たせば、血栓溶解療法や血栓回収術などの血管内手術を積極的に行います。これにより症状の軽減、早期の復帰を目指しています。また、発症予防の血管内ステント留置も行います。

 

 

6.診療科別主要手術別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)

 

消化器外科

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K672-2 腹腔鏡下胆嚢摘出術 143 0.94 6.46 1.40% 69.04
K719-3 腹腔鏡下結腸悪性腫瘍切除術 etc. 75 3.20 10.89 1.33% 72.35
K6335 鼠径ヘルニア手術 59 1.25 2.81 0.00% 74.14
K718-21 腹腔鏡下虫垂切除術(虫垂周囲膿瘍を伴わないもの) 53 0.19 4.85 1.89% 43.13
K634 腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術(両側) 45 1.27 2.87 0.00% 68.00

 

 胆嚢結石症は、胆石発作や胆管炎などを起こした場合、手術適応となり、精査の後、待機的に腹腔鏡下胆嚢摘出術を行います。また急激な腹痛で急性胆嚢炎と診断された場合には、炎症早期に緊急手術を行う方針としております。胆嚢摘出術は多くの場合、腹腔鏡で切除に向かいますが、腹腔内の癒着が高度である場合や、炎症が強く、大事な構造物が存在する肝門部の剥離操作が困難な場合には開腹手術に移行することがあります。

 結腸癌・直腸癌を含めた大腸癌は早期癌・進行癌ともに年々増加しています。当院では毎週内科・外科でカンファレンスを行い、大腸癌治療のガイドラインに基づいて適切な治療方針を決めています。進行癌や内科的治療の適応外と判断された場合は手術を行います。基本的には腹腔鏡で手術を行っていますが、最近はロボット支援下に行う手術も増えております。腸閉塞症状をおこした進行癌の場合は緊急で開腹手術を行うこともあります。

 鼠径とは、足のつけね(鼠径部)のこと、「ヘルニア」とは、体の組織が正しい位置からはみ出した状態を示しており、鼠径ヘルニアとはいわゆる脱腸のことであります。鼠径ヘルニアを放置すると時に腸がはまりこんで抜けない状況になることがあり、腸閉塞や腸管虚血壊死に至ってしまうことがあります。鼠径ヘルニアと診断された場合、放置して治ることはありませんので、手術をお勧めします。手術ではヘルニア嚢を処理し、弱くなった腹壁の筋膜をメッシュと呼ばれる人口補強材で補強しますが、従来の前方からの修復法に加え、腹腔鏡を用いた手術方法も多く行っております。

 虫垂炎は臨床症状、採血data、CTや腹部超音波などの画像診断で診断されます。虫垂炎と診断されると、広範な腹膜炎に移行する前に虫垂切除を緊急で行うことが多いですが、発症から時間が経過し膿瘍形成しているような一部の症例では、すぐに切除を行うと大腸切除を必要とする可能性があるため、一旦、抗生剤治療を行い、待機的手術を後日行う方針となります。基本は腹腔鏡下に虫垂切除を行いますが、腹腔内の状況によっては開腹手術となります。

 

 

整形外科

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K0821 人工関節置換術(股) etc. 101 1.36 15.61 70.30% 74.51
K1423 脊椎固定術、椎弓切除術、椎弓形成術(後方椎体固定) 23 3.57 20.74 30.43% 72.35
K1421 脊椎固定術、椎弓切除術、椎弓形成術(前方椎体固定) 22 2.50 25.77 18.18% 68.68
K0461 骨折観血的手術(大腿) etc. 19 2.16 19.90 52.63% 80.26
K1422 脊椎固定術、椎弓切除術、椎弓形成術(後方又は後側方固定) 18 1.78 23.83 27.78% 67.28

 

 腰部脊柱管狭窄症、頚椎症などに対する脊椎除圧・固定手術、変形性関節症、大腿骨頭壊死症などに対する人工股関節・人工膝関節置換術、大腿骨近位部骨折に対する骨接合術、人工骨頭挿入術を主に実施しています。

 

 

形成外科

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K2191 眼瞼下垂症手術(眼瞼挙筋前転法) 19 1.00 1.26 0.00% 76.32
K0871 断端形成術(骨形成を要する)(指) 10 1.50 15.50 10.00% 75.20
K0072 皮膚悪性腫瘍切除術(単純切除)
K2193 眼瞼下垂症手術(その他)
K0022 デブリードマン(100cm2以上3000cm2未満)

 

  1. 加齢による眼瞼下垂症に対する手術は2種類あります。一つは余剰皮膚切除で、重瞼部または眉毛下の皮膚切除を行います。もう一つは挙筋前転術で、重瞼部の皮膚切除に加えて、挙筋腱膜を剥離・前転して瞼板に縫合固定します。基本的には入院となりますが、日帰り手術も可能です。
  2. 糖尿病や動脈硬化が原因の足壊疽が増えています。放置すると感染をきたし大切断が必要になることが多いので、感染が起こらないように治療を行うことが重要です。感染がない足趾壊疽であれば、切断術後1-2週間で治癒します。感染や血流不良がある場合は、まず壊死組織の切除(デブリードマン)や切開排膿処置を行い、感染が沈静化した後に創治癒を早める治療を行うため、2ヵ月程度の入院が必要となります。
  3. 皮膚悪性腫瘍で多いのは、基底細胞癌と有棘細胞癌です。大きい腫瘍や、発生部位が眼瞼や鼻の場合は、切除によって生じた欠損部の再建手術が必要となります。

 

 

脳神経外科

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K164-2 慢性硬膜下血腫穿孔洗浄術 63 0.49 7.10 12.70% 78.11
K178-4 経皮的脳血栓回収術 60 0.40 23.83 55.00% 77.63
K1781 脳血管内手術(1箇所) 19 2.42 19.84 31.58% 65.05
K1692 頭蓋内腫瘍摘出術(その他) 16 7.00 44.25 37.50% 60.88
K609-2 経皮的頸動脈ステント留置術 15 7.33 10.13 40.00% 75.80

 

前述、診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)のとおりです。

 

 

呼吸器外科

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K514-22 胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術(区域切除) etc. 63 1.29 6.60 0.00% 73.63
K514-21 胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術(部分切除) 54 1.19 4.11 0.00% 69.94
K514-23 胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術(肺葉切除又は1肺葉を超える) etc. 52 1.87 7.25 0.00% 73.21
K5131 胸腔鏡下肺切除術(肺嚢胞手術(楔状部分切除)) 17 2.77 4.12 0.00% 43.41
K5132 胸腔鏡下肺切除術(部分切除) 11 1.73 4.46 9.09% 63.18

 

 肺悪性腫瘍に対する切除術が、多数を占めています。切除範囲は腫瘍の状態により決定され、肺部分切除、肺区域切除および肺葉切除もしくはそれ以上の切除が行われます。90%近くの症例は、胸腔鏡下(ロボット支援下手術を含む)により行われています。その他、気胸や肺良性腫瘤に対しても肺部分切除が行われています。

 

 

心臓血管外科

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K5603ニ 大動脈瘤切除術(上行・弓部同時)(その他) 56 2.38 26.11 35.71% 73.75
K5522 冠動脈、大動脈バイパス移植術(2吻合以上) 44 6.11 18.41 34.09% 71.39
K5551 弁置換術(1弁) 39 5.44 19.56 10.26% 70.87
K5612ロ ステントグラフト内挿術(腹部大動脈) 33 5.27 8.15 15.15% 81.88
K5607 大動脈瘤切除術(腹部大動脈(その他)) 18 3.17 14.56 11.11% 72.50

 

 ⼼臓⾎管外科の患者数の多い順でみると上位5位中第2~5番目を大動脈疾患が占めました。患者さん分布と疾患の発症頻度から、腹部大動脈瘤が多く、次に胸部大動脈瘤が続きました。治療法に関しては人工血管置換術が多く、次いでステントグラフト内挿術が続きました。基本的には確実な人工血管置換術を行いますが、開胸や開腹手術が困難な患者さんが増加しつつあり、低侵襲であるステントグラフトの需要も増しています。

 1番目に多い症例は弁膜症に対する弁置換術(1弁)でした。当院はハートチームで経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)の実施施設であり、その症例は増加傾向にあります。一方TAVIは解剖学的な制約も多く、その結果高齢者でも弁置換術(1弁)が増加した結果と推察されます。

 

 

産婦人科

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K8882 子宮附属器腫瘍摘出術(両側)(腹腔鏡) 51 0.96 4.78 0.00% 49.39
K877-2 腹腔鏡下腟式子宮全摘術(内視鏡手術用支援機器使用) etc. 33 1.00 4.91 0.00% 47.15
K872-33 子宮内膜ポリープ切除術(その他) etc. 31 1.26 1.55 0.00% 53.52
K867 子宮頸部(腟部)切除術 29 1.00 0.93 0.00% 43.00
K879 子宮悪性腫瘍手術 25 2.24 11.60 0.00% 62.36

 

 婦人科手術の大部分がキズの小さい手術(腹腔鏡手術やロボット支援下手術)で行なっています。患者さんの状態に合わせ、安全性を第一に考えてより最適な術式を選択しています。悪性腫瘍手術も多数の症例に対応しております。子宮頚がんは、前がん病変であれば子宮頚部切除術で子宮を温存する手術を行なっています。子宮内膜のポリープや粘膜下筋腫に対して子宮鏡を用いた切除術も積極的に行なっています。

 

 

眼科

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K2821ロ 水晶体再建術(眼内レンズを挿入)(その他) 839 0.78 2.07 0.00% 74.70
K2801 硝子体茎顕微鏡下離断術(網膜付着組織を含む) 200 0.98 5.65 0.50% 65.92
K2802 硝子体茎顕微鏡下離断術(その他) 101 0.83 5.66 0.00% 62.16
K2682イ 緑内障手術(流出路再建術)(眼内法) 76 1.20 3.34 0.00% 70.17
K2684 緑内障手術(緑内障治療用インプラント挿入術)(プレートなし) 61 1.15 6.92 0.00% 75.25

 

 眼科で最も多く手術をしているのは、白内障手術で、入院や日帰りで手術を行っております。極小切開で手術を行い、術後乱視を軽減しています。乱視矯正眼内レンズ(トーリックレンズ)も行なっています。保険適応の多焦点眼内レンズも採用しています。

 緑内障手術も積極的に行なっています。繊維柱帯切開術や切除術だけでなく、低侵襲緑内障手術(MIGS)も多く手術をしています。緑内障の程度などにより適応を決定しています。

 ⻩斑疾患への手術も多く施行しています。⻩斑前膜、⻩斑分離症、⻩斑円孔、硝⼦体⻩斑牽引症候群など様々な⻩斑疾患に対して手術を行なっています。難治性の増殖性糖尿病網膜症も積極的に手術を行い治療しています。

 その他には、加齢⻩斑変性症、近視性脈絡膜新生⾎管、網膜⾎管閉塞症や糖尿病網膜症に伴う⻩斑浮腫への、抗VEGF療法も2,200件を超えています。網膜剥離への緊急手術も積極的に行なっています。網膜剥離の範囲にも依りますが、原則当日入院で対応しています。⻩斑疾患や網膜剥離への手術も低侵襲硝⼦体手術(MIVS)で行い、術後の早期視力回復を目指しています。

 

 

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K340-5 内視鏡下鼻・副鼻腔手術3型(選択的(複数洞)副鼻腔手術) 62 1.36 5.74 0.00% 61.66
K3772 口蓋扁桃手術(摘出) 60 1.02 5.60 0.00% 22.47
K4611 甲状腺部分切除術、甲状腺腫摘出術(片葉のみ) 40 1.00 5.10 0.00% 62.70
K3191 鼓室形成手術(耳小骨温存術) 28 1.11 4.75 0.00% 58.61
K4571 耳下腺腫瘍摘出術(耳下腺浅葉摘出術) 28 1.00 4.82 0.00% 63.32

 

 手術に関しては基本的に前日に入院していただき、術後5日目に退院としています。内視鏡下鼻・副鼻腔手術に関しては術後に鼻腔内に創傷被覆を挿入して止血するため、1日長い入院期間を設定しています。内視鏡下鼻・副鼻腔手術は基本的には全身麻酔で手術を行っています。額の部分にある前頭洞や最深部にある蝶形骨洞は一旦手術しても病変が再燃することがあり、そのような場合は左右の副鼻腔をつなげて広く開放する手技も多く行っています。また、鼻内に生じた良性腫瘍や限局した悪性腫瘍も、内視鏡下に手術を行っています。

 咽頭・口腔領域では口蓋扁桃摘出術が最も多い手術です。当科では超音波凝固装置などの止血能に優れた機器を用いて口蓋扁桃摘出術を施行することで手術時間が短縮され、低侵襲手術の実践が可能となっています。

 甲状腺部分切除・甲状腺腫摘出術および甲状腺悪性腫瘍手術については前述の診断群分類別患者数等の欄に記載したとおりです。甲状腺の腫瘍は若年女性で罹患する方も多く、創部がきれいになるように切開、縫合をしています。創部は術直後はわざと盛り上げるように縫合し、ガーゼは当てずに透明のシートで被覆します。個人差がありますが、数カ月すると目立たない傷になります。

 鼓室形成術は病変が軽度の場合は内視鏡を用いて耳の穴から手術を行っています。鼓膜をめくりあげてその裏の病変を除去し、側頭部から採取した組織を移植して鼓膜を再建します。病変の進展度によっては一部骨を削開します。感染が強い場合や病変が骨の深くまで進展している場合は、耳の後ろを切開して顕微鏡で手術を行います。耳の後ろの骨の中に病変が進展していることが多く、この部分の骨を削ってしっかり病変を除去します。

 耳下腺腫瘍摘出術は、当科では大部分の症例で首の皺にそって耳の後ろから頸部にかけた切開で手術しています。腫瘍の部位によっては耳の前に、こちらも皺にそった切開を行います。いずれの場合も皺にそって切開することで術後の傷が目立ちにくくなるとともに違和感も軽減します。耳下腺腫瘍摘出術の合併症には顔面神経麻痺がありますが、浅葉腫瘍摘出の場合は軽度のものも含め一過性の麻痺が10%程度、永続性のものは0.4%程度となっています。

 

 

泌尿器科

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K8036イ 膀胱悪性腫瘍手術(経尿道的手術)(電解質溶液利用) 161 1.57 3.53 0.62% 76.68
K843-4 腹腔鏡下前立腺悪性腫瘍手術(内視鏡手術用支援機器を用いる) 99 2.04 9.59 0.00% 72.86
K7811 経尿道的尿路結石除去術(レーザー) 63 3.59 3.32 4.76% 66.84
K773-51 腹腔鏡下腎悪性腫瘍手術(内視鏡手術支援機器・7センチ以下) 36 2.25 8.06 0.00% 67.22
K783-2 経尿道的尿管ステント留置術 36 0.86 9.19 11.11% 72.53

 

 前述、診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)のとおりです。

 

 

循環器内科

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K5951 経皮的カテーテル心筋焼灼術(心房中隔穿刺、心外膜アプローチ) 343 1.43 3.38 0.58% 71.86
K5493 経皮的冠動脈ステント留置術(その他) 131 2.61 3.96 1.53% 73.14
K616 四肢の血管拡張術・血栓除去術 86 2.84 5.86 3.49% 74.88
K5952 経皮的カテーテル心筋焼灼術(その他) 64 1.42 2.72 0.00% 65.48
K555-22 経カテーテル弁置換術(経皮的大動脈弁置換術) 59 4.86 9.46 8.47% 85.25

 

  • 狭心症経皮的冠動脈ステント留置術施行(Kコード:K5493)
    心筋を養う冠動脈の内腔が狭くなって、心臓の筋肉に十分な血液が流れなくなる病気を狭心症といいます。心臓に必要なだけの栄養と酸素が不足すると、心筋は正常に働けなくなります。この時に患者さんは胸が締め付けられるような痛みを感じます。これが狭心症の発作です。この流れが悪くなった冠動脈を内側から拡張し血流を改善する⽅法に冠動脈ステント留置術があります。ステントは拡張することができる網目状の小さな金属製の筒です。ステンレススチールやコバルト合金などの金属でできています。小さなバルーンに取り付けたステントを冠動脈内で拡張し動脈硬化で狭窄を生じた血管壁に押しつけて拡張し血流を回復します。狭心症に代表される虚血性心疾患の治療として確立した方法で、循環器内科でも多くの患者さんに治療を行っています。
  • 心房細動経皮的カテーテル心筋焼灼術施行(Kコード:K5951、K5952)
    正常な心臓は安静時には1秒間に約1回のペースで規則正しく収縮していますが、心房細動とはそんなリズミカルな拍動が失われる代表的な不整脈です。心房細動は高齢化とともに急速に増加している不整脈です。自覚症状として脈の乱れ、動悸、胸部不快があります。放置すると心臓の中に血栓ができて、脳梗塞などの血栓症の原因となります。最近では心房細動もカテーテル・アブレーションで治療可能となっています。高齢の方でも症状の強い場合は治療を行います。カテーテル・アブレーションは、カテーテルという管を心臓内に⼊れて、不整脈の原因となっている部分に通電を加えて焼灼する治療法で技術・器具の進歩もあり治療成績が向上しています。
  • 閉塞性動脈硬化症への四肢血管拡張術(Kコード:K616)
    下肢を中心とする末梢動脈が動脈硬化のために細くなったり詰まったりしている病態が閉塞性動脈硬化症です。この血管の中に風船のついた管(バルーンカテーテル)を入れ、血管の狭窄や閉塞部でふくらませて、血管を拡張させる治療法が四肢血管拡張術です。
  • ペースメーカー移植術(Kコード:K5972)
    現時点で徐脈性不整脈を安全かつ確実に治す内服薬はありません。ペースメーカーは心臓の筋肉に電気刺激を与えることで、生体に必要な心収縮を発生させる医療機器です。弱ってしまった心臓の電気システムの一部を機械に代用してもらうペースメーカーが最も安全で確実な治療法となります。
  • 経カテーテル弁置換術(経皮的大動脈弁置換術)(Kコード:K555-22)
    高齢化社会に伴い重症大動脈弁狭窄症は増加しています。重症となれば胸痛や失神、息切れなどが生じ弁置換術を行わなければ症状は改善しません。しかしながら高齢者での開心術は負担も大きいため、近年、経皮的大動脈弁置換術(TAVI)という基本的には胸を切らずに局所麻酔で大動脈弁狭窄症を治す治療が行われています。治療後はリハビリを行い、約1週間で退院が可能となります。

 

 

血液内科

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K9212ロ 造血幹細胞採取(末梢血幹細胞採取)(自家移植) 11 6.00 1.46 0.00% 63.00
K6112 抗悪性腫瘍剤静脈内持続注入用植込型カテーテル設置(四肢)
K783-2 経尿道的尿管ステント留置術
K154-3 定位脳腫瘍生検術
K6151 血管塞栓術(頭部、胸腔、腹腔内血管等)(止血術)

 

 血液内科は、血液のがん(急性白血病、慢性白血病、骨髄異形成症候群、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫)、造血不全または難治性の貧血(再生不良性貧血、骨髄異形成症候群の一部)、血小板減少症(特発性血小板減少性紫斑病)などの血液疾患の診療を担当します。

 診療に際し、正確に診断を行うことが重要であることは言うまでもありませんが、診断方法は多岐にわたります。とりわけ悪性リンパ腫の場合、病変部位を外科的に採取し病理組織像を検討することが重要になります。リンパ節摘出術に加え、脳に病変がある場合は定位脳腫瘍生検術または内視鏡下脳腫瘍生検術、脊髄に病変がある場合は脊髄腫瘍生検術により病変を採取しています。

 診断の結果、治療が必要な場合、多くの場合で血管確保と呼ばれる点滴ラインを確保すること重要になります。これは造血器腫瘍(血液のがん)に対する抗がん剤投与の目的だけでなく、輸血、抗生剤、免疫抑制剤、栄養・水分補給等の多岐にわたる目的のために重要です。しかし、体格や高齢のため末梢血管からの点滴ラインの確保が困難な場合、埋込型カテーテルを設置し診療に当たっています。また、抗がん剤の長期・持続投与が必要な場合、血管外漏出が生じた時に副作用が重篤になるリスクのある場合、早い点滴速度で投与が必要な場合も、埋込型カテーテルを設置し治療を行っています。

 腫瘍の性状によっては排尿困難や重篤な出血が生じることがあり、全身状態の改善を目標に経尿道的尿管ステント留置術や血管塞栓術を行います。

 再発・難治性や高リスクの悪性リンパ腫や初回治療で奏功のあった多発性骨髄腫の患者さんには、治療効果を高めるため高用量化学療法を併用した自家造血幹細胞移植を実施しています。あらかじめ造血幹細胞の採取・保存を行います。

 

 

消化器内科

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K7211 内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術(長径2cm未満) 203 0.17 1.14 0.49% 70.27
K6532 内視鏡的胃、十二指腸ポリープ・粘膜切除術(早期悪性腫瘍胃粘膜) 103 0.99 5.23 0.00% 75.90
K688 内視鏡的胆道ステント留置術 75 3.29 6.84 4.00% 78.91
K721-4 早期悪性腫瘍大腸粘膜下層剥離術 75 1.09 4.45 0.00% 71.64
K654 内視鏡的消化管止血術 50 0.72 8.60 0.00% 74.78

 

 消化器内科で⾏っている⼿術は、⼝や肛⾨から内視鏡を挿入し、体表を傷つけず行う低侵襲治療です。腫瘍の切除、胆道閉塞・狭窄に対するステント留置、消化管出⾎に対する⽌⾎など、過去には外科的⼿術が必要であった治療が、内視鏡を⽤いた負担の少ない⽅法で⾏えるようになりました。早期に離床や食事が再開可能で、入院期間も短いです。

 

 

乳腺外科

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K4763 乳腺悪性腫瘍手術(乳房切除術(腋窩部郭清を伴わない)) 54 2.26 5.72 0.00% 66.56
K4762 乳腺悪性腫瘍手術(乳房部分切除術(腋窩部郭清を伴わない)) 45 2.38 2.80 0.00% 64.56
K4765 乳腺悪性腫瘍手術(乳房切除術・胸筋切除を併施しない) 29 2.03 7.41 0.00% 60.03
K4742 乳腺腫瘍摘出術(長径5cm以上)
K4764 乳腺悪性腫瘍手術(乳房部分切除術(腋窩部郭清を伴う))

 

 1位から5位はすべて乳癌や乳腺の良性腫瘍に対する手術に伴う入院のものです。乳癌の診療は基本的に外来通院で行われます。乳癌の治療成績は年々向上しており、全体としては10年生存率が90%近くになっています。乳癌には様々なタイプがあり、手術、化学療法や内分泌療法などの薬物療法、放射線治療などを適切に組み合わせた集学的治療が行われます。診療ガイドラインによって標準治療が普及している一方で、患者さんの年齢や合併症、ライフスタイルや価値観などに合わせた医療が求められる時代となっています。

 乳腺外科では乳腺疾患(主に乳癌)に対して、専門性の高い医療を提供できるように心がけています。20年前から乳腺外科医、放射線診断医、放射線治療医、形成外科医、病理診断医、細胞検査師、放射線科技師、臨床検査部技師など多職種で形成されるCancer boardを編成しています。毎週カンファレンスを行い、すべての患者対して適切な診断や治療方針を決定しています。

 

 

7.その他(DIC、敗血症、その他の真菌症および手術・術後の合併症の発生率)

DPC 傷病名 入院契機 症例数 発生率
130100 播種性血管内凝固症候群 同一
異なる
180010 敗血症 同一 35 0.23%
異なる 24 0.16%
180035 その他の真菌感染症 同一 15 0.10%
異なる
180040 手術・処置等の合併症 同一 53 0.35%
異なる 10 0.07%

 

 医療資源を最も投入した傷病名が播種性血管内凝固症候群(DIC)、敗血症、その他の真菌感染症、手術・処置等の合併症にあたる症例及び全入院患者に対しての発生率を表しています。入院契機の「同一」は入院の最初から上記の傷病の治療目的での入院であった場合で、例えば敗血症性ショックで救急搬送されるような場合です。「異なる」は別の傷病に対しての治療目的であったが、入院中に上記の傷病が発症したか入院時に併存していたため、その治療が主となった場合を表します。

 

 

8.リスクレベルが「中」以上の手術を施行した患者の肺血栓塞栓症の予防対策の実施率

肺血栓塞栓症発症のリスクレベルが「中」以上の手術を施行した退院患者数(分母) 1,512
分母のうち、肺血栓塞栓症の予防対策が実施された患者数(分子) 1,127
リスクレベルが「中」以上の手術を施行した患者の肺血栓塞栓症の予防対策の実施率 74.54%

 

 肺血栓塞栓症とは、下肢などの深部静脈で血栓ができ血液の流れに乗って肺動脈に血栓が詰まって起こる病気です。血栓ができる主な原因は血液が固まりやすい、静脈内血液の流れが悪くなるなどが挙げられます。腹部手術やその他の45分以上要する手術などで年齢、麻酔法、出血量、手術時間等を参考として総合的に評価したリスクレベル中以上の手術を行う時は手術前後の安静時間が長くなることで肺血栓塞栓症が起こりやすくなります。そのため間欠的空気圧迫装置や弾性ストッキングなどを装着したり抗血栓剤を投与して血栓ができるのを予防します。

 

 

9.血液培養2セット実施率

血液培養オーダー日数(分母) 4,571
血液培養オーダーが1日に2件以上ある日数(分子) 3.629
血液培養2セット実施率 79.39%

 

 当院の血液培養における2セット採取実施率は2024年が90%で、以前から高い実施率を維持しております。また2023年から血液培養採取時の消毒薬をヘキシジンに変更し、コンタミネーション率の低下に繋がっています。※上記の数字は穿刺液等を含む数字となります。

 

 

10.広域スペクトル抗菌薬使用時の細菌培養実施率

広域スペクトルの抗菌薬が処方された退院患者数(分母) 1,196
分母のうち、入院日以降抗菌薬処方日までの間に細菌培養同定検査が実施された患者数(分子) 996
広域スペクトル抗菌薬使用時の細菌培養実施率 83.28%

 

 当院では広域スペクトル抗菌薬使用は届出制となっており、耐性菌抑制のための抗菌薬適正使用を実施しています。広域スペクトル抗菌薬投与前に血液培養が採取されているかをICTミーティングでチェックしており、未実施の場合はアラートメッセージを送っています。

 

 

11.転倒・転落発生率

退院患者の在院日数の総和もしくは入院患者延べ数(分母) 170,036
退院患者に発生した転倒・転落件数(分子) 215
転倒・転落発生率 1.26%

 

 集計期間中における延入院患者数の中で転倒・転落は発生した割合となります。病院での入院生活は、日常住み慣れた環境とは異なり、その変化に加え、疾患による心身の機能低下により、思いがけない転倒や、ベッドからの転落事故が起こりえます。当院では、転倒・転落アセスメントシート・防止対策マニュアルに基づき事故防止に心がけ、転倒や転落の危険性が非常に高い場合は、転倒転落予防センサー等の設置等を行い対策しています。

 

 

12.転倒転落によるインシデント影響度分類レベル3b以上の発生率

退院患者の在院日数の総和もしくは入院患者延べ数(分母) 170,036
退院患者に発生したインシデント影響度分類レベル3b以上の転倒・転落の発生件数(分子) 49
転倒転落によるインシデント影響度分類レベル3b以上の発生率 0.29%

 

 集計期間中における延入院患者数の中で傷害を伴う転倒・転落の割合を示しています。

 

 

13.手術開始前1時間以内の予防的抗菌薬投与率

全身麻酔手術で予防的抗菌薬投与が実施された手術件数(分母) 2,657
分母のうち、手術開始前1時間以内に予防的抗菌薬が投与開始された手術件数(分子) 49
手術開始前1時間以内の予防的抗菌薬投与率 95.68%

 

 この指標は、手術開始前1時間以内に予防的に抗菌薬を投与した手術件数の割合となります。予防的に抗菌薬を投与する目的は、手術部位の感染を予防することでになります。手術を受ける患者さんの安心や安全のため、重要な感染予防の一つとして予防的に抗菌薬が投与されています。

 

 

14.d2(真皮までの損傷)以上の褥瘡発生率

退院患者の在院日数の総和もしくは除外条件に該当する患者を除いた入院患者延べ数(分母) 121,130
褥瘡(d2(真皮までの損傷)以上の褥瘡)の発生患者数(分子) 22
d2(真皮までの損傷)以上の褥瘡発生率 0.02%

 

 縟瘡発生率は、看護ケアの質を示す重要な指標であり、患者のQOLの維持や医療費の抑制、在院日数の短縮に繋がるため、褥瘡予防対策の達成度を測ります。当院では褥瘡対策チームで対策を検討・実施することにより、褥瘡発生を少しでも減少させるよう努めています。

 

 

15.65歳以上の患者の入院早期の栄養アセスメント実施割合

65歳以上の退院患者数(分母) 10,247
分母のうち入院後48時間以内に栄養アセスメントが実施された患者数(分子) 2,491
65歳以上の患者の入院早期の栄養アセスメント実施割合 24.31%

 

 65歳以上の入院患者に対する早期の栄養アセスメントは、低栄養の早期発見と対策に不可欠であり、食物、栄養関連の履歴、身体計測、栄養に焦点を当てた身体所見、既往歴といった情報を収集・分析し、栄養状態の問題点を特定するプロセスとなります。

 

 

16.身体的拘束の実施率

退院患者の在院日数の総和(分母) 170,036
分母のうち身体的拘束日数の総和(分子) 1,257
身体的拘束の実施率 0.74%

 

 身体的拘束とは、患者の生命の危機と身体的損傷を防ぐために行う、患者の身体又は衣服に触れる必要最小限の物理的な拘束および、行動を落ち着かせるために行う薬剤使用による拘束です。当院では患者の人権を尊重し安全を優先させる観点から、身体的拘束を行う以外に安全を確保する代替方法がない場合を除いて身体的拘束をしない診療・看護の提供に努めております。

 

 

更新履歴

2025.9.30
DPCデータに基づく「病院情報」を公表しました。
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