放射線部ー治療部門
疾患ごとのトピックス
乳がん術後照射をご検討の患者さまへ
乳房温存療法では乳房温存手術後の乳房に対する放射線治療を行うことがガイドラインで勧められています。近年、欧米の一部の国で1回に照射する放射線量を増やし、治療回数を減らして治療期間を短くする「短期(寡分割)照射法」が試みられました。これらの研究結果によると短期照射法は従来の照射法と比べて治療効果や安全性がほぼ同じであり、すでに日常の診療で用いられています。日本で行われた全乳房短期照射法の臨床試験の結果は未だ出ていませんが、海外のデータを元に2014年4月より、全乳房短期照射が保険収載されるようになりました。
当院でも、2017年10月より乳房温存手術後の放射線治療を受けられる方のうち、下記の基準を満たす患者さんは、従来の照射法に加えて、全乳房短期照射のどちらかを選んで頂くことが可能となりました。
放射線の当たる範囲は従来の照射法と同じです。1日1回週5回で、従来の照射法では1回2グレイで25回行うところ、短期照射では、1回2.66グレイで16回行います。
なお、治療計画時に、乳房の形状、体格などから、短期照射が不適切と判断させて頂く場合があります。
生命保険(とくにがん特約やがん保険)の中には、放射線の合計線量が50 グレイ以上の場合に還付金が支払われるタイプのものがあり、短期照射法では、実際の総線量は42.56グレイとなるため、保険還付金が支払われない可能性があります。対応は保険会社によってまちまちですので、あらかじめ加入されている保険会社にご確認ください。
当院での全乳房短期照射の対象となる基準
- 50歳以上
- 腫瘍が1つだけで5cm以下の浸潤癌
- 手術の際の切除断端が陰性であること
- リンパ節転移、遠隔転移(肺や骨などの他の臓器の転移)がない
- 抗がん剤治療、分子標的薬治療を受けたことがない
その他
骨転移に対する疼痛治療のメタストロン治療、悪性リンパ腫へのゼバリン治療、前立腺癌の骨転移に対するゾーフィゴ治療は、放射性同位元素を使用するため核医学部門(RIセンター)で扱います。各がんの担当科主治医から、適応を検討の上、ご依頼ください。