泌尿器科
診療内容
腹腔鏡下手術
当院泌尿器科の特色として腹腔鏡下手術を積極的に行っていることが挙げられます。従来の体に大きな傷をつけて行う手術とは異なり、小さな孔を開け、カメラと細い手術器械を用いて目的の手術(臓器の摘出、再建など)を行う方法です。従来の方法に比べて侵襲が少ないため、患者さんは手術の翌日には食事や歩行が可能となります。
副腎腫瘍ではほぼ全例で、腎臓の腫瘍(腎盂尿管癌を含む)も9割以上の方で腹腔鏡下手術を採用しています。前立腺については当院では2014年2月からロボット支援前立腺全摘術(RALP)を導入し、2018年4月までに400例を超す症例を経験してきました。膀胱全摘に関しても2017年末までに計78例おこなっており、2018年4月からロボット支援膀胱全摘術(RALC)を導入しております。その他の疾患に対しても幅広く腹腔鏡下手術を取り入れています。
合併症も少なく、安定した成績が得られております。
腹腔鏡下に行っている手術
- 副腎の手術(腹腔鏡下副腎摘除術)
- 腎臓の手術(腹腔鏡下腎摘除術・腎尿管全摘術、ロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術)
- 前立腺癌の手術(腹腔鏡下前立腺全摘除術、ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘術)
- 膀胱癌の手術(腹腔鏡下膀胱全摘、ロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘術)
- 腎盂尿管移行部狭窄症の手術(腹腔鏡下腎盂形成術)
- 悪性リンパ腫などの腹腔内腫瘍の組織検査(腹腔鏡下リンパ節生検)
前立腺癌
診断には経直腸的前立腺針生検を行っています。5〜10分程度の検査です。診断が困難な場合には、腰椎麻酔下に約20カ所の多部位生検をする事もあります。転移のある症例には内分泌療法が基本となります。転移の無い症例に対しては患者の年齢、状態、希望などにより手術、放射線治療、内分泌療法から治療法を選択しますが、当科では手術療法を積極的に行っています。手術は全例、ロボット支援腹腔鏡手術(RALP)で行っております。当院は新しくロボット手術を始める医師に義務づけられている症例見学の対象施設に認定されております。
手術成績は安定しており、平均手術時間は2〜3時間、平均出血量は50cc以下で、術中術後の合併症もほとんどなく、自己血輸血の準備もしていません。術後入院期間は平均8日です。
放射線治療は、基本的にIMRT(強度変調放射線治療)を行っています。術後再発症例に対しても放射線治療を考慮しています。
内分泌療法が無効になった前立腺癌に対しては、ドセタキセルやカバジタキセルを用いた抗がん化学療法、また新規治療薬イクスタンジ、ザイティガを使用しています。
膀胱癌
表在性膀胱癌に対する経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)は平成29年度188件でした。術後2〜3日で退院します。再発予防目的に抗がん剤やBCGの膀胱内注入療法を適宜施行しています。浸潤性膀胱癌に対しては膀胱全摘以外に抗がん剤動注療法・放射線療法の併用で膀胱温存も行っています。
平成29年度の膀胱全摘症例は7件でした。平成21年以降の症例はすべて腹腔鏡手術で行っています。平成30年4月からは手術支援ロボットda Vinchを用いた膀胱全摘(RALC)を開始しております。
出血量は少なく、輸血を要する事は稀です。従来の開放手術より術後の回復は早く、早期の退院が可能となります。尿路変向術は尿管皮膚瘻、回腸導管、回腸新膀胱を患者さんと相談しながら選択しています。
腎盂尿管癌
手術はほとんど腹腔鏡で行っています。必要に応じて術前後に抗がん化学療法を行い、治療成績の向上を目指しています。
腎癌
多くは腹腔鏡手術にて腎を摘出します。部分切除も積極的にロボット支援腹腔鏡にて行っています。進行症例の場合には開放手術で行います。下大静脈に浸潤しているような場合にも他科と協力して積極的に手術を行っています。
腎細胞癌の発見時に転移を伴っている患者さんや術後に再発した患者さんには、従来のインターフェロン、インターロイキン2を用いた免疫療法ならびに、分子標的薬(ネクサバール、スーテント、アフィニトール、トーリセル、インライタ、ヴォトリエント)、免疫チェックポイント阻害剤(オプジーボ)の使用も行っています。
精巣腫瘍
年間5〜10例。リンパ節転移のある症例では抗がん化学療法を中心に後腹膜リンパ節郭清も必要に応じて行います。
前立腺肥大症
内服治療で効果がなければ手術を考慮します。内視鏡による経尿的前立腺切除術(TURP)を行っています。比較的大きな前立腺肥大症に対しては平成24年からはホルミウムレーザーによる経尿道的前立腺手術(HoLEP)も導入しております。平成28年度はTURP:38件、HoLEP:22件でした。入院期間は約5日となります。
尿路結石症
外来にて体外衝撃波(ESWL)による治療を中心に、必要に応じ内視鏡治療を入院にて行っています。軟性尿管鏡によるレーザー治療も行っています。平成26年度は、経尿道的尿管砕石術(TUL):49件、経皮的腎砕石術(PNL):4件。
副腎腫瘍
副腎皮質ホルモンが過剰に分泌される「クッシング症候群」と呼ばれるものや、「アルドステロン」という血圧を調節(上昇)する物質が過剰に産生される「原発性アルドステロン症」と呼ばれるもの、また副腎髄質という場所の腫瘍では「褐色細胞腫」と言われ、「アドレナリン」という物質が多くなり高血圧を引き起こすものなどがあります。症状をおこさない腫瘍もあります。また稀ですが癌化している場合や、肺癌等他の臓器から癌が転移して腫瘍化している場合もあります。
高血圧などの症状をおこしている可能性が高い場合や腫瘍が3㎝を越えるような場合には手術を考慮します。ほとんど全例、腹腔鏡手術で行います。年間約8例程度の件数です。
男性不妊症
治療は行っていないため他院に紹介しています。
その他の疾患
その他腎盂尿管移行部狭窄症、膀胱尿管逆流症、腹圧性尿失禁、膀胱瘤、停留精巣、鼠径ヘルニアなどの手術も行っています。