耳鼻咽喉科
診療内容

耳疾患

 突発性難聴、顔面神経麻痺、めまい疾患については、原則外来通院にてステロイドなどを用いた治療を行い、良好な治療成績を挙げております。外来通院困難な方や、重度の持病をお持ちの方は入院にて治療を行っております。また顔面神経麻痺については、重症度によっては手術治療も選択肢に挙げています。外リンパ瘻については、新規診断マーカーCTPによる検査にも対応しております。顔面神経麻痺や外リンパ瘻も含めて耳科疾患の緊急手術の受け入れも行っております。
 中耳手術領域では、2010年に耳科手術を専門とするスタッフの着任以降、手術件数は増加傾向にあり、2013年からは毎年100件以上の耳科手術を行っております。大学病院・サージセンター以外の一般総合病院としては全国屈指の手術件数であり、当院の耳科手術が地域の患者・近隣の医療機関にご評価頂いているものと思います。手術内訳としては鼓室形成術が最も多く、他にも鼓膜形成術、アブミ骨手術、顔面神経減荷術、外リンパ瘻閉鎖術、側頭骨悪性腫瘍手術なども行っております。聴力改善成績は良好で、疾患別で真珠腫72%、慢性中耳炎(接着法以外)82%、慢性中耳炎(接着法)92%、鼓室硬化症67%、癒着性中耳炎60%、耳小骨奇形・離断100%、耳硬化症100%であります(以上2010年以降、新鮮例の成績)。聴力改善だけではなく、耳漏停止、鼓膜穿孔閉鎖も良好な結果です。2015年からは一部の症例には内視鏡下耳科手術を導入しています。手術の際の切開も小さくて切開創も目立ちにくく、さらに低侵襲となっております。また小児症例や、心疾患・肺疾患・精神疾患・抗凝固剤が切れないなどの既往症のある症例でも適応があって患者が望めば手術を行い、合併症の少ない、安全・安心な手術が実現できています。

 

鼻・副鼻腔疾患

 鼻・副鼻腔領域では最先端の手術機器・支援機器を用い体への負担が少なくかつ短時間の手術を行っています。2013年度より鼻・副鼻腔手術用磁気式ナビゲーションシステムを導入し、より安全に手術が行えるようになりました。副鼻腔手術は全例にナビゲーション併用の内視鏡下手術を行い、年間100件を超える手術を行っております。2014年は鼻・副鼻腔手術全体で159件の手術を行いました。術後の創傷治癒を促進し出血、感染のリスクを減らすためにアルギン酸塩の創傷被覆材を使用し良好な成績をあげています。

 

咽頭・口腔疾患

 咽頭・口腔領域では口蓋扁桃摘出術(アデノイド切除術)が最も多い手術であり、年間50~70件ほどの手術を行っています。当科では超音波凝固切開装置を用いて口蓋扁桃摘出術を施行しており、最近の平均手術時間15分程です。手術指導および手術支援機器の利用により手術時間が短縮され、低侵襲手術の実践ができていると思われます。唾液腺腫瘍の中でも耳下腺腫瘍については、当科で多くの手術を行っております。過去14年で350件もの手術治療を行いました。頸部エコー・CT、穿刺吸引細胞診などで術前評価を十分行い、症例によってはより負担の少ない術式として、顔面神経末梢枝からの逆行性アプローチを採用しております。

 

甲状腺疾患

 当科は日本甲状腺外科学会専門医制度認定施設であります。甲状腺・副甲状腺外科領域では専門性の高い治療を行っており、症例数でも日本の甲状腺外科をリードしていると考えています。当院は甲状腺専門病院ではなく総合病院でありますので、他の持病や既往症があっても治療に取り組むことができますし、リンパ節に転移がある症例や周囲の組織に浸潤がある症例であってもきちんと評価し治療を行います。甲状腺癌では全例に全摘手術を行う施設もありますが、術後残存葉に再発しないかわりに必ず甲状腺機能低下症になるため甲状腺ホルモンの内服が一生必要になります。当科では、術前に頸部エコー・CT、エコーガイド下穿刺吸引細胞診などで正確に病期診断し、可能であれば最小限かつ必要な範囲の切除にとどめ機能障害の軽減を目指しており、良好な治療成績を得ております。単純な甲状腺葉切除であれば60分以内に終了します。
 甲状腺良性腫瘍は基本的に手術を行ないませんが、手術が必要な場合もできるだけ低侵襲に行うべく局所麻酔下で30分もかからない核出術を行っています。また症例は絞りますが、内視鏡併用での2〜3cmの小切開手術にも取り組んでおり、その傷跡はほぼわからないものになります。バセドウ病手術、原発性および二次性副甲状腺機能亢進症の内分泌外科的手術も多く行い、良好な治療成績を挙げております。

 

音声障害

 音声機能領域に対しても力を入れており、音声専門外来を行っています。音響ソフト「VA」を開発し2011年に論文発表も行い、外来で実際に使用している他に、電子スコープ、ストロボスコピーなどを用いて音声障害を詳しく分析し、音声外科手術に役立てています。声帯ポリープ・ポリープ様声帯などに対しては顕微鏡下喉頭微細手術、反回神経麻痺などによる嗄声に対してはPTFEテープを用いた甲状軟骨形成術Ⅰ型と披裂軟骨内転術、けいれん性発声障害に対する甲状軟骨形成術Ⅱ型にて音声改善手術を行い、良好な音声の改善を認めています。

 

頭頸部悪性腫瘍

 頭頸部悪性腫瘍では、地域がん診療拠点病院として、および日本頭頸部外科学会頭頸部がん専門医指定研修施設として専門性が高いだけでなく、患者の視点に立った医療を提供しています。頭頸部悪性腫瘍は、治すとともに機能温存や外観の維持も重要な要因となりますが、一般に手術治療では多少なりとも機能障害が出現し、変形がおこります。当院では強度変調放射線治療を導入しており、放射線科と密に連携を取って治療にあたっています。
 咽頭癌では早期癌・進行癌ともに、明らかに手術治療が有効である場合は手術治療を選択しますが、放射線化学療法が有効である場合には積極的に化学放射線療法を行っています。化学放射線療法では、治療中の有害事象、特に粘膜炎とそれに伴う疼痛が問題になります。当科では粘膜炎と疼痛について詳細に検討し、鎮痛剤の選択とその投与方法についての検討も行い、疼痛の軽減を図ることができ成果の一部を論文発表しました。
 口腔癌は毎年20件以上手術を行っていますが、機能温存の立場から切除範囲は必要以上に大きくしないようにしています。口腔癌の予防的頸部郭清術は、手術の低侵襲化のために明らかな頸部リンパ節転移がなければ行なっていませんが、舌癌の5年生存率は70%以上と良好な結果であります。喉頭癌は(化学)放射線治療がメインで、stageⅡまでの5年生存率は90%以上あり喉頭温存率も非常に高くなっています。
 また上顎洞癌の治療では従来動注化学療法や壊死組織除去(ネクロトミー)が行われていましたが、これらの治療は苦痛が強く侵襲が高いものでした。当科ではその治療方針について検討を加え、TS-1を用いた上顎洞癌三者併用療法を用いています。低侵襲治療であるとともに、治療成績も従来の報告と遜色ないものであります。
 2014年の頭頸部癌の新患者は116件でした。再発症例も含めると、手術症例は99件、放射線治療・化学療法・緩和療法症例が52件ありました。

 

手術名 2014年 件数 2013年 件数 2012年 件数 2011年 件数 2010年 件数
鼓室形成術・鼓膜形成術 103 89 77 76 43
アブミ骨手術 4 4 6 1 1
顔面神経減荷術 2 2      
先天性耳瘻管摘出術 5 9 3 3 2
その他の聴器手術 13 16 11 7 8
鼻中隔矯正・下甲介手術 25 16 17 16 19
内視鏡的鼻副鼻腔手術(両側手術も1件とカウント) 107 97 85 79 93
鼻・副鼻腔の良性腫瘍摘出術 9 9 4 10 7
鼻・副鼻腔の悪性腫瘍摘出術 3 7 3 2 4
後鼻神経切断術 8 4      
その他の鼻・副鼻腔、顔面の手術 7 2 3 2 2
口蓋扁桃摘出術(含むアデノイド切除術) 63 50 77 36 62
咽頭・口腔の良性腫瘍摘出術 15 14 11 10 1
咽頭悪性腫瘍摘出術 3 4 4   3
舌・口腔底悪性腫瘍摘出術 22 27 21 23 20
顕微鏡下喉頭微細手術 43 37 52 38 67
喉頭形成術(甲状軟骨形成術など) 6 6 4 7 7
喉頭悪性腫瘍摘出術(全摘、部切) 7 5 4 4 4
その他の咽喉頭・口腔の手術 7 3 2 8 4
唾液腺良性腫瘍摘出術 30 27 28 24 42
顎下腺悪性腫瘍手術 4 2 1 1 4
耳下腺悪性腫瘍手術 2 4 2 2 5
頸部良性腫瘍・嚢胞摘出術 17 16 13 13 17
頸部悪性腫瘍手術 2     1 2
頸部郭清術(側) 15 19 13 9 23
甲状腺腫摘出術 24 22 24 27 27
バセドウ甲状腺手術 1 5 4 2 3
甲状腺悪性腫瘍手術 52 73 59 60 59
気管切開術 30 26 25 32 17
その他の唾液腺・頸部の手術 94 87 72 63 63
合計 723 682 625 556 609
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