呼吸器外科
研究と業績

治療成績

 全身麻酔手術症例数は多少の変動はありますが、近年では年間250から300症例で推移しています(図1)。2023年の年間全身麻酔手術症例数は255例で、主な疾患は原発性肺悪性腫瘍160例、気胸27例、転移性肺腫瘍26例、縦隔腫瘍11例、その他31例でした。全症例に対する原発性肺癌の割合は60%を超えており、肺癌の手術数としては全国的にみても十分な実績と言えます。手術の多くは、内視鏡下で行われており、2023年では合計234例(91.8%)が胸腔鏡下(ロボット支援下を含む)で行われています。2018年より開始したロボット支援下手術は、年毎に増加しており、2023年では総計61例(肺癌 54例、縦隔腫瘍 7例)がロボット支援下で行われています。

 

図1.全身麻酔下手術件数の推移

 

 当診療科における手術の実際のイベント率とNCD(National Clinical Database)登録データから構築されたリスクモデルを用いて推定したイベント率の比(OE比)をアウトカム毎に算出しています。 2016年1月から2023年12月までの当科で行われた1,245例の手術関連死亡は10例(0.8%)で予測発生率以下です。重篤な合併症に関しても予測発生率を下回っており、安全に手術が施行されていることを示しています。

 

図2.当科手術の予測死亡率等の比(OE比)


OE比の解釈
  • 1より大きい場合:予測死亡率よりも実際の死亡率が高い
  • 1より小さい場合:予測死亡率よりも実際の死亡率が低い

肺癌手術治療成績

 2014年から2016年までの3年間に行われた肺癌手術の445例の病理病期を図3に示します。半数以上の症例が1A期の症例であり、1期全体では75%を占めています。一方、3期以上の進行肺癌は10%強であり比較的早期の肺癌に対して手術が行われていることが分かります。

 術式は1A期症例の半数以上に部分切除や区域切除が行われているように早期の肺癌に対しては肺機能を温存するために縮小手術を積極的に取り入れています。

 

図3 肺癌手術症例の病理病期と術式

 

 術後生存曲線を図4に示します。全体の手術5年後の生存率は83.4%、無再発で5年後に生存する率は71.8%です。この数字の違いは、再発しても薬物治療や放射線治療が奏功する場合があることを示しています。病期別でみると1A期では再発する症例が少なく、90%以上で5年生存が得られています。一方、病期が進むと再発率が高くなりますが、再発後の治療などにより4期を除く進行期でも60%近くの5年生存率が得られています。

 

図4 術後生存曲線(左:全生存率 右:無再発生存率)

 

5年生存率 (全生存) 5年生存率 (無再発生存)
1A:91.2% (n=238) 1B:83.0% (n=97) 1A:90.0% (n=238) 1B:71.7% (n=97)
2A:75.4% (n=39) 2B:59.8% (n=27) 2A:47.6% (n=39) 2B:35.1% (n=27)
3A:64.1% (n=40) 3B:100% (n=1) 3A:23.6% (n=40) 3B:100% (n=1)
4 :33.3% (n=3) 4 :0.0% (n=3)

 

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