乳腺外科
診療内容

乳腺外科外来

 火曜から金曜まで初診と再診を行っています。担当は外来診察担当表をご参照下さい。
 初診は紹介状ご持参を原則とします。紹介状がない場合、初診の方が多い時は後日の予約とさせていただくことがありますので御了承ください。

初診予約 紹介医から当院「地域医療連携室」を介して予約する事が可能です。
乳腺外科診察予約 連携医から当院「地域医療連携室」にお申込み下さい。
地域医療連携室: TEL:0743-63-5611(内線:3113)

 

外来診療(初診時)

 問診、診察を行い病状に応じて以下のような検査を行います。診察で乳癌を疑う所見がない場合でもマンモグラフィーや超音波検査を行って確認します。

 乳癌と診断が確定した場合はガイドラインなどに従って標準的な治療方法を提示します。

 

入院治療(手術)

 乳癌と診断された場合、多くの場合はまず手術を受けていただくことになります。入院期間は手術の内容によって多少異なりますが、術後1週間程度です。

 病理診断(手術標本の顕微鏡による評価)が全て判明するのに2〜3週間かかりますので、その結果は外来で説明いたします。

 

外来治療(薬物療法、放射線治療)

 手術以外の治療は外来通院で行ないます。

 手術の結果(病理診断)判明する以下のような要因によって、再発する危険性がどの程度あるかがわかります。その上でそれぞれの治療が再発する危険性をどの程度少なくするかをご説明します。最終的にどのような治療を受けるかはご本人の御希望を尊重しながら、患者さんと主治医が相談して決めていきます。

再発の危険因子:腫瘍の大きさ、リンパ節転移の有無、組織学的悪性度など
治療効果の予測因子:エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、HER2など

<手術以外の治療の種類>

化学療法・抗体療法(抗癌剤治療・ハーセプチンなど) 外来化学療法室を利用して外来通院で行ないます。
主治医が毎回、副作用の有無を確認し、体調に合わせて治療を行ないます。
内分泌療法 通常、閉経前は抗エストロゲン剤、閉経後はアロマターゼ阻害剤を5年間服用します。再発リスクに合わせて10年間の治療をお勧めすることがあります。
放射線療法 乳房温存手術では併用を原則とし、それ以外では病理診断(リンパ節転移の数、断端への癌波及の有無)によって必要時に提案致します。
乳房切除の場合でも再発リスクに応じて放射線治療をお勧めすることがあります。

 

定期的な受診

 術後は10年程度の外来通院をしていただき、再発の有無などを定期的に調べます。再発のリスクに合わせてマンモグラフィー、乳房超音波、CT、骨シンチなどの検査をお勧めします。

 近隣に「かかりつけ医」がある場合は連携して診察することもできます。

 

乳癌治療の全体像、薬物療法の意義

①なぜ再発するのか、微小転移とはなにか

 乳癌と診断され手術を受ける前にCTや骨シンチなどで検査を受けて骨、肺、肝臓などに転移はないと診断されていても、手術を受けた後、何年か経ってから再発をきたすことがあるのはなぜでしょうか。これは検査で見つけられないほど小さな転移(微小転移といいます。)が存在することがあるためで、微小転移は肺、肝、骨などに存在するため、手術や放射線治療などの局所療法ではこれを取り除くことはできません。この微小な転移が後日大きくなって検査で見つけられるような大きさになると再発と診断されることになります。

 薬物療法はこの微小転移を制御あるいは死滅させてしまうことを目的に行います。その結果として再発率を減らすことになります。

 

②病理検査(=がんのサブタイプ)に応じた薬物療法が必要です。

 乳癌組織のER(エストロゲン受容体)、PgR(プロゲステロン受容体)などのホルモン受容体、HER2(ハーツー)、ki67の発現を評価し、代替的なサブタイプ分類に従って治療方針を決定することが推奨されています。具体的には以下のようになります。

 

<乳癌のサブタイプ>

 ki67は主にルミナルA、Bの区別に使用。

<サブタイプに応じて選択される基本的な治療の種類>

 実際には再発のリスクと、このような薬物療法によって再発リスクをどの程度まで減少させることができるかを推定して治療法を決めます。例えば、ルミナルAやルミナルBでは上の表ではホルモン療法が推奨されていますが、リンパ節転移があって再発率が高いと推定されれば化学療法を勧めることがあります。

 

乳癌の手術

1)乳房の術式の選択
 日本乳癌学会のガイドラインでは、乳房温存術の適応除外とすべき条件として、以下の5項目が挙げられています。当院ではMRI検査による詳細な病変の範囲の検討は必須としています。温存療法の主な適応は切除量の目安は乳腺の20-30%までに収まることですが、病変の局在、乳房の大きさ、下垂の有無などによって温存した乳房の変形の程度(整容性)は異なるため患者さん個々の病状に応じて判断します。

 

<温存療法が適応とならない=乳房切除(全摘)の適応となる条件>

  1. 多発癌が異なる乳腺腺葉領域に認められる。
  2. 広範囲にわたる乳癌の進展が認められる。(病変が広範囲にわたる場合)
  3. 温存乳房への放射線治療が行えない。(活動性のSLE、強皮症など)
  4. 腫瘍径と乳房の大きさのバランスから整容的に不良な温存乳房の形態が想定される。
  5. 患者が乳房温存療法を希望しない。

 

2)乳房の術式は主に2種類
①乳房部分切除術
 乳房を全て切除するのではなく、しこりの周囲に2cm程度の正常な乳腺をつけて切除する方法です。乳癌は通常、乳管内進展という、顕微鏡でしか分からない広がりを伴っているためです。大きめのしこりの場合は1/4程度の乳腺が切除されることがあります。病理検査の結果、癌がまだ温存した乳房に残っている可能性があると判断される場合は再手術(追加切除もしくは乳房切除術)が必要となります。

 取りきれていると判断された場合も、残った乳房に対し放射線治療(週5日で5~6週間の通院)をおこなうことが基本とされています。その目的は局所再発の防止と残した乳房内に新たに乳癌が発生することの予防です。ただし、照射をしても数%の割合で再発の可能性があります。また、高齢の患者さんの場合には放射線治療を省略する場合があります。

 放射線治療は放射線治療部の先生と連携しておこないます。治療の詳細や副作用などは放射線治療部の医師が説明します。

②乳房切除(全的)術
 癌のある側の乳房全体を乳頭もふくめて切除します。

<乳房切除>

<乳房部分切除>

 

3)腋窩の術式の選択
 乳癌は腋窩(脇の下)のリンパ節に転移を起こすことがあります。腋窩リンパ節に転移がある場合は郭清(切除)することで良好な局所制御を得ることができます。また、リンパ節転移の個数は、手術後の再発(肝臓、肺などの遠隔転移)がおこる確率と関係があるので、リンパ節転移の有無を知ることは今後の予後を知る上で重要な指標になります。再発率が高い場合は抗癌剤による治療が必要とされており、手術後の薬物療法の選択の際にも重要な判断基準になります。

 

4)腋窩の術式は主に2種類
①腋窩リンパ節郭清
 脇の下のリンパ節を一定の範囲で全て切除します。この方法は従来の標準的な術式です。
 腋窩リンパ節郭清をすることによっておこる合併症は以下のようなものがあります。

  • 手術を受けた側の腕のむくみ、虫さされやけがをした場合、通常以上に腫れたり、傷がなおりにくくなったりすることがある。(リンパ浮腫と言います)
  • 手術側の手を使いすぎるとだるくなる。
  • 手術側上肢の皮膚の知覚が鈍くなる。(違和感が残る)

 術後早期からおこる場合と数年たってからおこる場合がありますが、マッサージなどの予防がもっとも重要です。マッサージの方法などについては、担当の看護師からご説明します。手術後の点滴や採決、血圧測定などはできるだけ健側(手術をしていない側)で行うこと、けがをしない、荷物を長時間持たないなどの注意が必要です。

②センチネルリンパ節生検
 特殊な色素を乳輪周囲の皮膚に注入することによってリンパの流れを可視化することができます。これによって乳房内の癌から最初に転移を起こすリンパ節(=センチネルリンパ節といいます)を手術中に1~数個探しだすことが可能となります。この1~数個のリンパ節のみ切除する方法です。センチネルリンパ節だけを切除した場合には郭清術に比べてリンパ浮腫の発生率や違和感などの合併症を少なくすることができます。

 手術中の病理検査で切除したリンパ節に転移があると判断された場合は、郭清術を追加することがあります。手術中にセンチネルリンパ節を同定できない場合には郭清術に変更することがあります。

 当院ではICGを用いた蛍光法を採用しています。特殊な色素(ICG)を皮下に注入するとリンパ流が可視化され、腋窩リンパ節に順に流入していく様子が容易に観察できます。

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