産婦人科
診療内容
子宮筋腫
子宮筋腫の三大症状は、生理の出血量が多い月経過多症、生理痛のきつい月経困難症、子供の出来にくい不妊症です。
治療方法
基本的には
①手術
②ホルモン療法
③経過観察・対症療法
の3種類しかありません。
<経過観察・対症療法>
三大症状がそれ程強くなく、子宮の大きさもあまり大きくなければ、手術をしないで3~6ヶ月毎に診察をして経過観察としています。ただし、経過観察とする場合は、当科では、積極的にMRIを用いて子宮筋腫の質的診断(良性・悪性の鑑別)を行っております。また、子宮筋腫は、閉経を迎えるとそれ以上大きくならず、生理に伴う症状もなくなり、むしろサイズは小さくなることがほとんどであるため、閉経が近い女性の場合も経過観察とする場合があります。
しかし、生理に伴う症状が強い場合は①手術か、②ホルモン療法が必要となります。
<ホルモン療法>
子宮筋腫は閉経を迎えると小さくなる、という現象を逆に利用した治療法です。薬剤で人工的に体を閉経期の状態にする治療法です(偽閉経療法)。毎日鼻にお薬を噴霧したり、あるいは4週間毎に病院で注射をしますが、この薬剤は連続では半年間しか使えません。そのため、このホルモン療法の間は子宮筋腫は小さくなりますが、治療を止めればまた大きくなり、効果は一時的と言えます。閉経期に近い人なら、この治療を繰り返すあいだに閉経をむかえれば、手術をしないで治療を終わることができます。
<手術療法>
子宮筋腫の根本的治療は手術療法です。今後の妊娠を希望しておられる場合は、子宮を残して子宮筋腫だけをくりぬく「子宮筋腫核出術」を勧めています。しかしこの手術ではすべての子宮筋腫を取りきれる訳ではありません。MRIや手術中の所見などでは見つけきれないほど小さな筋腫もあり、そのような小さなものは取りきれません。手術後に残っていた筋腫がまた大きくなり、生理のトラブルを引き起こすことがあります。そのため、子宮筋腫の完全な治療は「子宮全摘術」であるといえます。子宮全摘の方法もおなかを切開する「腹式子宮全摘術」と膣の方から子宮を摘出する「膣式子宮全摘」があり、当院では比較的侵襲の少ない膣式子宮全摘術も積極的に取り入れております。
また、閉経後に筋腫が大きくなるようでしたら、悪性の子宮肉腫の可能性も考え、手術をお勧めしています。
卵巣腫瘍
卵巣の腫瘍には、良性・悪性・境界悪性とあり、良性の腫瘍にも色々な種類のものがあります。良性腫瘍の中には、卵巣のう腫と呼ばれる中に液体を含んだ腫瘍や、奇形腫と呼ばれる中に髪の毛や脂肪などを含む腫瘍、チョコレートのう腫と呼ばれる中に血液が充満している腫瘍などがあります。
検査
卵巣はお腹の中の深いところに埋もれているため、外から良性か悪性かを確実に判断することは困難なため、血液検査やMRIなどの検査を駆使し、良性か悪性かを「推測する」ことになります。
手術
卵巣腫瘍がある程度以上大きくなった場合は、手術が必要になりますが、術前に良性と診断された患者さんは、腹腔鏡下での手術を積極的にお勧めしています。
サイズが大きいものや術前の診断で悪性の可能性が否定できない場合は、開腹術になることもありますが、その場合も、下腹部横切開での開腹などできる限り負担が小さくなるように配慮しています。
定期的な産婦人科の受診は重要です
卵巣癌は治療の難しい疾患で、手術と抗癌剤による化学療法等を組み合わせた治療が必要になります。多くの場合まず手術を行い、その結果によって術後に数カ月間の化学療法(抗がん剤治療)を行います。卵巣癌の患者さんの多くは無症状であるため、早期発見が難しく、検診で偶然早期で発見された場合以外は進行癌の状態で見つかる場合が多くなっています。早期の発見のためにも定期的な産婦人科の受診は重要な事と言えるでしょう。
子宮内膜症
正常では子宮内腔にしかない子宮内膜(毎月生理が起きたり、赤ちゃんが妊娠したりする場所です)が、本来ないはずの場所にあり、そこで毎月生理のたびに出血を起こすために現れる病気です。症状は、生理痛が強く、生理以外の時にも下腹痛、腰痛に悩まされ、性交痛、排便痛のあることもあります。
最近増えてきています
最近この病気が増えてきていると言われています。その原因は時代による女性の生活スタイルの変化があると考えられています。昔は若くして結婚し、何人もの子供を生む人が多くおられました。そのような場合には子宮内膜症ができかかっても妊娠で治り、またできそうになると次の妊娠がくるというわけです。現代では結婚が遅くなり、少子化が進み、妊娠回数が減少してきたことで、子宮内膜症が多くなったと考えられています。この病気を閉経期以前に完全に治すことは非常に困難です。
治療方法
治療は、子宮内膜症に対する治療薬が増えてきたため、病気の状況や患者さんのライフスタイルに合わせて治療薬を選択することも時に可能となりました。
<薬物療法>
筋腫の時と同じ偽閉経療法や、子宮内膜症の病変そのものを治癒させる新しい黄体ホルモン剤、子宮内膜症の痛みを効果的に取ってくれる低用量ホルモン剤などがあります。
<手術>
薬物療法でも抑えられない症状がある場合や、卵巣の予宮内膜症であるチョコレートのう胞があれば、手術(腹腔鏡下手術や開腹術)をして、子宮内膜症の病変を摘出、焼灼することもあります。
閉経期に癌化する危険性があります
閉経を迎えると、この病気は治りますが、稀にチョコレートのう胞が閉経期に癌化する危険性があるといわれています。そのため、ある程度の大きさのチョコレートのう腫は、手術をしない場合でも、定期的な経過観察は必要であるとお勧めしています。
子宮脱、女性性器脱
閉経後の女性で、何度かお産をしておられる方は、子宮を支えている靱帯が緩み、子宮が下がってしまうことがあります。場合によっては、子宮が外に出てしまうこともあります。子宮が下がると、膀胱や直腸や膣の壁が子宮と一緒に下がってくることがあります。膣から何かものが出てきた感じがしたり、外陰部にものが挟まれた状態になり、場合によっては尿が出にくくなることがあります。
手術
子宮脱も程度により症状は様々ですが、症状が強い場合は手術が必要です。症状が軽いときには膣に丸いリング(ペッサリー)を入れて、脱出している子宮や膀胱を上に固定することで、症状がなくなる方もあります。手術は、膣から行い、子宮を摘出し、脱出している膀胱、直腸を縫い縮めます。
子宮頚癌
病気の進み具合で0期から4期に分類されます。
治療方法
<0期・1期の初期>
単純子宮全摘を行います。検診でこの時期までに見つければほぼ完治できます。将来妊娠を希望されるなどの理由で子宮を残したい方で、病巣範囲が狭い場合には子宮頚部円錐切除に留めることも出来ます。
<1期と・2期>
広汎性子宮全摘術を行い、必要があれば、術後に放射線療法や化学療法(抗がん剤治療)を行います。
<3期>
手術不能で、放射線と化学療法を組み合わせた同時化学放射線療法を行い、効果が出れば、放射線治療後に手術を行うこともあります。
<4期>
放射線療法や化学療法を行います。
子宮体癌
子宮体癌は最近増加しています。子宮体癌も0期から4期に分類されます。
治療方法
<0期・1期>
単純子宮全摘を行い、子宮頚部に癌が及んでいない1期では準広汎性子宮全摘術を行います。
<2期・3期>
頚部に及んでいる2期、3期では広汎性子宮全摘術を行い、必要があれば術後に放射線治療や化学療法を行います。
<4期>
放射線治療や化学療法を行います。
~婦人科の癌(子宮頚癌、子宮体癌、卵巣癌)について~
子宮癌検診を受けましょう
まず最初にお勧めするのは子宮癌検診を受けることです。子宮癌検診を受けておられる方を診ていますと、癌がみつからなくても、子宮筋腫、卵巣腫瘍、その他の婦人科疾患がみつかることがよくあります。また、細胞診で異常(前癌状態など)を指摘されることも時々あり、精密検査をすることにより初期の子宮癌が発見されることもよくあります。
また最近は、子宮頚癌を引き起こすウイルス(ヒトパピローマウイルス)の検査も、患者さんの状況によっては行っています。
年に一度は癌検診を
あらゆるガンは、早期発見・早期治療が大原則です。症状が出てから受診するのでは、進行癌でみつかることが多いようです。奈良県は全国的にも検診率の悪い県で、検診を受ける人は毎年受け、受けない人は一度も受けないというのが実情です。歳をとったら検診なんかは受けなくてもよいとお考えの方が多いようです。子宮癌検診を少なくとも年に一度は受けるようお勧めします。
放射線治療後の脚のリンパ浮腫
婦人科の癌(子宮頚癌、子宮体癌、卵巣癌)では、手術の際にリンパ節を摘出したり、または放射線治療を行うことが多いため、治療後に脚のリンパ浮腫を引き起こす可能性が高くなります。リンパ浮腫とは、骨盤の中でリンパ液の流れが悪くなり、その結果脚にむくみが生じるものです。このリンパ浮腫は、程度がひどくなると、皮膚が硬くなり、脚が曲げられなくなるなど日常生活に非常に大きな困難をもたらします。
リンパ浮腫の治療のためのマッサージ
当科では、がんの治療によりリンパ浮腫が起こりやすくなっている患者さんには、リンパ浮腫の治療のためのマッサージを入院中に患者さんに勉強してもらい、患者さんが自分で出来るようになってもらってから退院して頂いています。また、リンパ浮腫予防のためのストッキング(弾力ストッキング)の着用も積極的にお勧めしています。
~子宮頚癌予防ワクチン(サーバリックス)について~
子宮頚癌予防ワクチンが、2009年10月に日本でも製造承認されました。これは、子宮頚癌の原因となるウイルス(ヒトパピローマウイルス=発がん性HPV)に感染することを防いでくれるワクチンです。
発がん性HPV
性交渉で感染しますが、非常にありふれたウイルスであり、8割もの女性が人生で一度は感染するといわれています。また、感染しても多くの場合、自然にウイルスを体外に排出するため、実際に発がんするのはごくまれと考えられています。
「感染」を予防してくれます
子宮頚癌予防ワクチンは、この発がん性HPVの「感染」を予防してくれるワクチンであり、すでに感染した発がん性HPVを体から排除してくれたり、すでにガンになりかかっている病変を治してくれたりするものではありません。したがって、初交前(ウイルスの感染前)の女児にこのワクチンを接種することが一番効果的な接種方法です。しかし、初交後であっても、複数ある発がん性HPVのうちすべてのタイプに感染している女性は少ないと考えられるので、ワクチン接種によってある程度は「感染」を予防する効果が期待できます。
★繰り返しになりますが、あくまでも子宮頚癌を引き起こすウイルスの「感染」を予防するものですので、すでに感染してしまった方には投与しても効果は期待できません。
産婦人科 鏡視下手術について(腹腔鏡、子宮鏡等)
当院は2014年春より、日本産科婦人科内視鏡学会および日本婦人科腫瘍学会から施設認定を受けています。現在の当院の腹腔鏡下手術の適応疾患は以下の通りです。
『良性腹腔鏡手術』
※手術既往や大きさでの制限はありません。ただし手術時間の延長・合併症リスクの上昇が予想される場合、当院での説明をご納得いただいた場合のみ実施しています。
- 卵巣腫瘍、卵巣嚢腫、卵管病変等の付属器疾患の全て(悪性の可能性が低いもの)
- 子宮筋腫、子宮腺筋症(特に大きさや個数に制限は設けておりません。筋腫核出術、子宮全摘術のどちらも対応します。他院で断られた方でも実施しています。但し、当院での基準もありますので[主に年齢に関連]、外来でご相談ください)
- 緊急子宮外妊娠手術(随時、可能です)
- 子宮内膜症・慢性骨盤痛(ダグラス完全閉鎖、不妊症、月経困難症に対する治療の全てに対応しています)
- 不妊症関連(精査、癒着剥離、卵管采形成等を行っています。また卵巣機能温存を可能な限り行っており、正常卵巣にダメージを与えない工夫をおこなっています)
- 他科合同手術(上腹部病変と同時に腹腔鏡治療が可能です。傷は最小限にする工夫を行っています。消化器外科等の他科と相談の上、実施しています)
『悪性腹腔鏡手術』
- 初期子宮体癌(2014年8月1日より、子宮体癌に対する腹腔鏡下婦人科悪性腫瘍手術の施設認定を受けており、保険診療が可能です。)
- 初期子宮頸癌(2016年11月1日より、[先進医療A:腹腔鏡下広汎子宮全摘術]の施設認定を受けており、先進医療を利用した保険診療が可能です。)
- 他の癌腫でも技術的に対応可能な場合は適宜、検討致します。
実施例:後腹膜リンパ節生検~郭清術、直腸がんの腟転移再発部切除等
婦人科腹腔鏡手術の待機状況(2017年2月現在)
外来受診後、1~2ヶ月以内に実施可能です。
腹腔鏡下手術(ふっくうきょうかしゅじゅつ)とは…?
ここ最近、腹腔鏡下手術の社会的ニーズが高まっております。
一体、腹腔鏡下手術とはどういうものなのでしょうか?
まずは簡単に腹腔鏡について説明します。
腹腔鏡は内視鏡(小型カメラ)の一つです。【写真1・2】が実物です。その内視鏡をおなか(腹腔)に入れるため、腹腔鏡と言う名前が付いています。内視鏡を入れる先が変われば、名前も変わりますが、器械は同じ物を使用します。例えば、胸に入れて、肺の手術をする時は胸腔鏡(きょうくうきょう)下手術、膝の関節等で手術する時は関節鏡(かんせつきょう)下手術という名前になります。
では一体、その腹腔鏡下手術はどういうものなのでしょうか?
名前の通り、手術の一つの方法です。では、何か普通の手術と違いがあるのでしょうか?
理解して頂くためには、まず通常の手術の工程を説明します。
『一般的な手術(開腹手術:かいふくしゅじゅつ)の工程』
①開腹(かいふく)
②病変部確認(びょうへんぶかくにん)
③栄養血管の確認
④血管処理
⑤病変部の摘出
⑥止血確認(しけつかくにん)
⑦閉腹(へいふく)
通常、まず手術は病気の部分(腫瘍等)を直接、目でみて確認します。確認するためには、病気の部分全体を見る必要がありますから、従来の一般的な開腹方法では病気の部分の大きさにもよりますが、婦人科では約10cm前後、おなかを切ります。そして、病変部の確認を行いますが、病気とは言っても、人間の体の一部です。つまり生きている組織の一部ですから栄養が必要であり、必ず栄養血管が病気の部分にも存在します。その血管を見極めます。そして血管を処理します(血管を2ヶ所、糸等で結び、その間を切断する。血管の端は糸で結ばれているため出血しない)。
そうすれば、病気の部分を出血させる事なく、取り出せます(摘出)。仮に病気の部分が10cm程の大きさであっても、おなかは10cm程、穴を開けてありますから、袋等を使って回収すれば、破ったりこぼしたりせずにそこから取り出せます。
そして病気の部分を取り出した後、残った正常部分に異常がないか、切断した血管の端から出血がないか(止血確認)等を確かめ、最後に最初に切った部分をまた糸で結んで(閉腹)、終了します。
◎ 腹腔鏡下手術だと、何がどう変わってくるのでしょうか?
当院では、まず臍(へそ)の底の部分に6~10mm切開し、その部分に腹腔鏡のカメラを入れます。そして、おなかの中を確認します。つまり病変部の確認のためにわざわざおなかを切る(開腹)する必要はありません。【写真3・4】
これは例えば、診断目的のみの検査「ごくまれに遭遇する診断が難しい子宮外妊娠の特殊なケース・卵管の疎通性(卵管が詰まっていないかどうかの検査)の確認等」では事足ります。もちろん、手術終了時はその切開した部分を縫いますが、へその底の部分であるため、術後の傷あとは目立ちません。
◎ 診断だけでなく、治療(摘出や切除等)が必要な場合はどうなるのでしょうか?
基本的には開腹手術と同じ工程が必要となります。血管の処理をするためにはそのために鉗子(かんし)や電気メス、レーザー、持針器(じしんき:おなかの中で糸を結ぶための器械)等が必要になります。【写真5】を御参照下さい。これらも全て、原則的には直径5mm以内の構造物であり、これらの操作のために、通常下腹部に1~3ヶ所程(御希望によって、傷の数を減らす事や傷を小さく出来ます。但し傷を減らす事で、手術の出来が悪くなる事もありますので、適宜御相談ください)、6~7mm程度の傷が必要であり、そこから鉗子等の器械を入れて、手術操作をします。
これで例えば、慢性骨盤痛(まんせいこつばんつう)の治療や子宮内膜症等の癒着剥離(ゆちゃくはくり)、また子宮全摘術(子宮を全部取り出す手術)の場合、おなかの上での手術操作は終了となります。子宮全摘術の場合、腟側も切断されるため、おなかの傷は最小限となります。また、場合によっては、腟から(ダグラス窩というスペースを利用して)取り出す事も可能であり、子宮筋腫核出術(子宮筋腫だけを取り出し、子宮を残す手術)でも適応できます。
◎ ある程度の大きさの腫瘍の手術の場合はどうなるのでしょうか?
数cm大~大人の頭を超えるような腫瘍がある場合、臍に10mm程の傷がありますのでそこから取り出します。場合によっては、腟の壁を一部切開することで、取り出す事も可能です。また最近、増加している卵巣腫瘍(卵巣の一部に水の様な物がたまっている病気)の場合はその水を吸い出して、水が入っている風船をしぼます様にして、10mmに傷から腫瘍を皮の様な部分だけにして摘出します。 【写真6】をご参照下さい。
中には悪性の可能性が否定できないような場合もあります。その場合は、腫瘍を袋に入れて、中身がこぼれないようにしながら、摘出します。これも10mmの傷や腟の壁を切ることで可能です。
また若い方で、卵巣の腫瘍部分のみ摘出して、正常部分は残す事が大前提である場合も数多くあります。その場合は、20mm程の傷になる事もありますが、なるべく小さい傷で手術しております。
大体、以上の内容で腹腔鏡手術がされています。具体的な手術風景は【写真7・8】を御参照下さい。
【長所】
- おなかの傷が小さい。つまり、術後の痛みが少なく、早期退院・早期社会復帰しやすい。
- 全身状態の回復が早い。(術中に腸管が空気に触れず、術後の動きがいい。CRP低値)
- 術後の癒着の合併が少ない。特に将来、妊娠希望の女性の場合、有利である。
- 美容面で優れている。
【短所】
- 適応疾患が限られ、まだ全ての婦人科疾患が適応にはなっていません。また婦人科疾患は一部巨大な腫瘍を形成する性質もあり、数kgを超えると、開腹手術の方が安全に施行出来る可能性があります。
- 手術の難易度があがる。重篤な合併症の頻度が上がる。
- 手術時間が開腹手術よりも一般的には長い。
当院では40年以上に渡って広汎子宮全摘術やリンパ節郭清術等の難手術を数千件執刀(国内トップの一人)され、今なお現役の術者である林道治部長の指導の下、日本産科婦人科内視鏡学会(産婦人科医で腹腔鏡手術をする医師が所属する団体)による審査で技術認定された医師が着任し、常に患者さんに有意義で、不利益のない手術を心掛けております。
また当院では、他科でも腹腔鏡手術等の鏡視下手術が盛んで、泌尿器科、外科、呼吸器外科等で国内有数の多数の手術が行われており、各分野で指導的な立場の病院でもあります。そのため手術数も多く、スケールメリットを活かした最新鋭の手術器具が導入されております(2014年3月よりOlympus社3Dカメラシステムが3台、ロボット手術システム[ダヴィンチ]等:現在ダヴィンチは産婦人科領域では保険適応外であり、稼動準備中です)。
腹腔鏡手術の分野は最も今、進歩が著しく、器械類にしても毎年進化しております。歴史は浅い分野ですが、数年前と比べても、大きく手術方法が変化発展してきております。反面、難易度も高く、十分な腹腔鏡手術経験のある医師や施設で治療を受けないとむしろ危険な手術となる側面もあります。
Minimally invasive surgery(低侵襲手術=手術を受ける患者さんにとって、負担が少ない手術)という表現がされていますが、手術時間はかかり、合併症リスクも上がります。
腹腔鏡手術を検討されておられる方は、担当医から十分に説明を受けて、御納得を頂いてから、実施しております。御検討中の方は、外来受診してご相談ください。
当院での腹腔鏡適応疾患(基本的には腹腔鏡で可能な手術は全て対応)
- 子宮筋腫(温存希望の場合は子宮筋腫核出術・根治希望の場合は子宮摘出術)特に大きさや個数での制限はありません。手術時間や合併症リスクを御理解の上、実施します。
- 卵巣腫瘍(腫瘍の性状、年齢等により、腫瘍のみ切除~卵巣も一括切除)
- 各種不妊症の検査~癒着剥離等
- 子宮内膜症(月経痛や不妊治療、慢性骨盤痛に対する病巣切除やチョコレート嚢腫治療)
- 子宮腺筋症や子宮頸部異形成等に対する根治手術(腹腔鏡下子宮全摘術)
- 子宮脱再発(腟脱)に対する腹腔鏡下腟断端吊り上げ術等
- 悪性腫瘍は保険適応は子宮体癌Ⅰa期のみです。その他の子宮体癌、子宮頸癌、卵巣癌は場合によって腹腔鏡手術が可能です(費用は各患者さん毎に検討)。
となっております。ご希望の方は一度、直接ご相談ください。