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在宅世話どりセンター

概要

在宅医療を専門的に扱う部門

 在宅世話どりセンターは、天理よろづ相談所病院(本院、通称「憩の家」、当時は財団法人、現在は公益財団法人)が1966年(昭和41年)4月に開所して25年目の1991年(平成3年)に併設された在宅医療(訪問診療と訪問看護)を専門的に扱う部門です。介護保険制度が創設されたのが2000年(平成12年)ですので、その9年前にはすでに始動していたということになります。

 

「憩の家」創設の理念の一部を具現化したもの

 「在宅世話どりセンター」(以下「在宅センター」と略称します)はやや珍しいネーミングですが、まだ、介護保険制度導入前の開設で、「憩の家」の急性期医療を補完し、社会福祉をも視野に入れた志の高い医療部門といえます。

 ケア・マインド、すなわち、「お世話どりマインド」を強く意識した響きを持っていますが、とりもなおさず、天理教二代真柱様の「憩の家」創設の理念の一部を具現化したものと考えます。公益財団法人天理よろづ相談所病院(本院)は「身上部」と称されるのに対して,在宅センターは「世話部(社会福祉をその業務の一部とする)」に所属することになっておりますが、併設当初は「事情部」との協働も行われ、そうした機構組織的な位置づけは、前述した病院創設の理念と介護保険制度が未整備の時期に開設されたという歴史的な経緯が関係していると考えます。

 

当初から専属の医師と看護師が常勤しています

 当センターの開設当時、許可病床数800床を越える地域中核病院(現在は715床)に併設され、かつ、専属の医師と看護師が同一部署で常勤するという開所形態は、我が国では珍しい在宅医療部門で、その後もその形態は継続しています。

 ただし、介護保険制度の導入後の現在では、在宅医療体制は、地域包括ケアシステムに集約されるように、在宅支援病院(200床未満の病院)、在宅支援診療所,訪問看護ステーションを中心に構築されるようになり、大規模病院併設の在宅医療部門としての活動を続けることの限界を感じるようになってきました。

 

地域医療貢献への更なる一歩、白川分院への移転

 昨今、地域の在宅医療ニーズは、質・量ともに著しく増加しており、今後の超高齢社会の到来に備えるためにも、在宅センターそのものの機能強化が必要と考え、数年前から白川分院への移転の可能性を検討してきました。

 令和元年(2019年)7月1日、周到な準備ののち、白川分院のA棟3階に、新しく内装工事を加え、移転しました。これを機に、従来の医師2名体制から医師3名体制に改め、さらに4ヶ月間の実績の積み上げののち、11月には、単独・強化型在宅療養支援病院の白川分院の在宅部門として生まれ変わりました。将来的な白川分院の機能強化や地域医療へのさらなる貢献を可能にする体制が出来上がったことになります。

 今後、「憩の家」東西病棟および南病棟における医療と連携しつつ、亜急性期リハビリ医療・慢性期療養医療・精神科医療を担う白川分院の在宅医療部門として、活動していきます。

 一方では、若手の医師や看護師をはじめ、医療系学部・学科の学生たちの研修場所としての機能も担うべきだと考えています。

 

多職種協働:チーム医療の推進

 病院医療と異なり、在宅医療はさまざまな職種が関わる「チーム医療」が機能して初めて成り立つ医療です。そのために、多職種協働が求められています。

①院外処方・地域の薬剤師会との協働

 在宅医療に関係する投薬は、一部を除いて、ほとんどすべて院外保険薬局にお願いすることになります。院外処方を利用することで、処方薬についての薬剤師による配達や管理、内服指導(いわゆる「在宅訪問薬剤管理指導」)などを受けることが可能になります。処方する医師と実際に調剤し手渡す薬剤師による二重チェックの意味においても、有効な制度です。

 

②訪問看護・訪問歯科診療・訪問リハビリテーション・訪問介護

 在宅センターの主な業務は訪問診療と訪問看護です。しかし、それだけでは在宅医療のニーズに応えることはできません。当センター以外の訪問看護ステーションとの協働による訪問看護の拡大・充実や訪問リハビリテーション、地域の介護支援事業所による訪問介護や訪問入浴介護、さらには、「憩の家」あるいは地域の歯科医院の協力を得ての訪問歯科診療、さらには、デイサービス(通所介護)やデイケア(通所リハビリテーション)などの仕組みも利用し、いわゆる地域包括ケアシステムの考え方の中での在宅医療を実践しています。

 

③在宅訪問栄養食事指導

 在宅医療の様々な場面で大切だと思われるもののひとつが栄養に関する問題です。在宅療養という状況の中で可能で望ましい料理や栄養は?そういった疑問に応えていくひとつの方法は、管理栄養士に在宅療養の現場での関わりを持ってもらうことです。まだ十分ではありませんが、白川分院の管理栄養士、あるいは他施設の管理栄養士さんとの協働にて、料理・栄養に関する課題に取り組むことも大切な在宅センターの役目だと考えています。

 

④ケアマネジャー(介護支援専門員)

 上述の地域包括ケアシステムが効率よく組み上げられるために忘れてならないのは、在宅医療の要でもあり縁の下の力持ちでもあるケアマネジャー(介護支援専門員)の方々です。ケアマネジャーの立てるプランによって、多くの在宅療養者と介護人、さらには、それらを取り巻く在宅医療関係者が支えられているといっても過言ではありません。なお、介護保険制度の対象外の方々は、ケアマネジャーのサポートを受けることはできませんので、地域包括ケア支援センターや市役所の福祉課などにご相談下さい。また、当センター併設の「在宅医療相談外来」でも対応できます。

 

ニーズに答えられるように活動を

 在宅医療は一般診療所と訪問看護ステーションが協働して行われることが多いのですが、前述のごとく、当在宅センターでは、開所当初より常勤で専従の在宅医と訪問看護師が在宅医療業務に携わってまいりました。充実した救急体制、先進的な医療機器など、医療資源が豊富な病院を「在宅医療の後方支援機関」と捉え、かつ、白川分院そのものが後方支援病院として存在することを考えれば、在宅センターには、まだまだ高い可能性が残されていると考えます。

 在宅医療に関心が集まり、住み慣れた家庭を第一義的な療養場所と考える風潮が強くなっているとはいえ、現状の在宅医療がそうしたニーズに十分こたえられているとは言えません。病院機能や介護老人施設機能の適正な利用も大切な選択肢です。療養者も介護人も、そして、在宅医療に関わる関係者も、すべての人々が納得できるような在宅医療が展開できることを期待しつつ活動していきます。

 

「在宅医療相談外来」および「在宅床ずれ外来」

 在宅療養者は様々な問題を抱えており、その療養者を支える介護人たちも様々な問題を抱えているのは容易に推測できます。それら問題の解決法の糸口を見つけることに苦労することも容易に推測できます。「在宅医療相談外来」は、いつでも在宅医療に関係する疑問への対応ができることを目的に、白川分院内科外来の中に設置したものです。

 また、在宅医療現場でのよくある問題の一つが「在宅医療現場における床ずれケア」です。床ずれ外来が設置されている病院を見受けることは稀ではありませんが、在宅療養者に限定して「在宅床ずれ外来」を設置している病院は、見受けられないように思います。在宅療養者の多くが何らかのキズのケアを必要としています。中でも、床ずれは、療養者のQOLを下げ、介護負担を増加させます。そうした「在宅床ずれ」に積極的に関与していこうというのが、この度、すなわち2020年4月開設の「在宅床ずれ外来」です。単回の往診、地域訪問看護ステーションとの協働、当在宅世話どりセンターからの継続的な褥瘡ケア、など、様々なオプションを考えています。いずれの外来も、地域包括ケアシステムの充実に貢献できると考えています。

 詳しくは、白川分院・在宅世話どりセンターまでお問い合わせください。

 

特色

当在宅センターでの在宅医療の実際

疾患構成の変化

 近年の医療における進歩に加え、超高齢社会の訪れを間近にして、在宅センターでケアしている疾患構成には変化が見られ、医療依存度の高い疾患が在宅医療に託されるようになっています。特に、平成18年(2006年)に「がん対策基本法」が制定されて以来、がん緩和ケアの普及・進歩と相まって、「慢性期疾患を扱う在宅医療」といった概念から「医療ニーズの高い、急性期病態をも扱う在宅医療」と行った内容に変化してきています。

 さらには、がんではないが、それに匹敵する緩和ケアが必要な疾患、すなわち、心不全や呼吸不全、そして神経難病など、長期にわたり在宅での緩和ケアも増加しています。

 

在宅での処置やケア内容

 病院ほどではありませんが、在宅でも実に様々な処置やケアを行います。例えば、胃瘻などの経管栄養、排尿障害に対する尿路カテーテルのケア、気管切開・人工呼吸器・酸素療法などに関するケア、中心静脈栄養・輸液療法、さらには褥瘡を含む創傷ケア・スキンケア・ストーマケアなど、実に様々です。

 

看取り

 2008年(平成20年)4月に、在宅医療の柱の一つである「24時間体制」を取り入れてからは、在宅緩和ケアや自宅での看取りの機会が増加しており、その結果、在宅での看取り率は、従来の50%未満から、2011(平成23)年度以降は80%を超える在宅看取り率を維持しております。在宅看取り率を目的とすることの是非は、にわかには判断できませんが、終末期を含めた療養場所として,従来の「病院」から「自宅」の比率が高まったことは,療養者の「生活の場」そして「日常」を大切にする、すなわち「aging in place、住み慣れた場所で一生を過ごす」という視点から,評価できるのではないかと考えています。近年、在宅医療現場で良く話題に上がるACP(advance care planning、人生会議)にも、積極的に取り組んでおり、在宅療養者およびご家族の方に「不満を抱かせない」よう心配りをしています。

取り組み

 一部重複もありますが、当在宅センターとしての取り組みを紹介します。

在宅医療相談外来

 2015年(平成27年)4月1日から、地域に開かれた在宅センターを目指すべく、在宅医療相談室を開設していましたが、2019年7月の白川分院への移転を契機に、発展的に在宅医療相談外来としました。

 

在宅床ずれ外来

 2020年4月から開設し、在宅医療現場における床ずれケアの底上げに役立てたいと考えています。

 

日本褥瘡学会奈良県在宅褥瘡セミナー

 日本褥瘡学会奈良県在宅褥瘡セミナーを2008年(平成20年)2月に(2007年度行事として)開始してから、毎年開催していますが、2019年には13回目を数えました。最近は医師・看護師・ケアマネ・薬剤師・療法士・介護士など300人を超える在宅医療関係者が参加します。在宅医療現場の様々な問題を、特に、褥瘡や創傷に焦点を当てつつ判供する機会を参加者に提供する機会となっています。学会に参加するのが難しい介護職の方々にも最新の床ずれケアの知識と手技を学ぶ場として好評です。

 

天理褥瘡勉強会「ひまわりの会」

 2008年から天理市の訪問看護ステーションの訪問看護師の有志と、天理褥瘡勉強会「ひまわりの会」を約2ヶ月に1回開催し、地域の皮膚創傷ケアの研鑽に取り組んでいます。参加希望の方は、(公財)天理よろづ相談所病院白川分院 在宅世話どりセンター:0743-61-0238)までご連絡ください。

 

なら天理多職種ケアネットワークNAT-NET

 2014年(平成26年)5月13日、PT/OTや訪問看護師を中心とした「なら天理多職種ケアネットワークNAT-NET」が発足。当センターからは在宅医と訪問看護師の計3名が指導的な立場で参加しています。緊張や拘縮をきたさないポジショニングのあり方、療養者にも介護者にもやさしい移動・移乗方法などについての実践的な勉強会を開始し、地域コミュニティーの在宅医療における実践力の向上を目的とした活動を行っています。

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