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身上部

医学研究所
研究内容とその特色、業績

病理部門

 過去5年の実績は下記の通りである。

年度 部検数 組織診件数 迅速診断件数 細胞診件数
2010 66 8941 493 15734
2011 55 9101 560 15589
2012 37 9457 582 15960
2013 41 9341 565 14042
2014 34 8576 437 11645

 CPCは年12回、肺VATSカンファレンス、腎生検診断会、腹部外科との症例検討会(年間合計約100回)を定期的に開催、さらに乳癌キャンサーボードなどにも参加して、集学的治療に寄与できるよう努めています。尚、逐次病理を用いた臨床研究もサポートしています。対象疾患は全領域に及びますが、特に呼吸器内科、放射線科との共同研究として間質性肺炎を中心とする非腫瘍性の肺疾患に力を注いでいます。また悪性リンパ腫の診断にも力を注いでいます。

RANBP2-ALK急性骨髄性白血病の診断と治療

 我々は、ある急性骨髄性白血病の患者さんの白血病細胞の染色体を分析したところinv(2)(p23q13)という染色体異常を認め、この染色体異常によってRANBP2-ALKキメラ蛋白が産生されていることを見出しました(Int J Hematol, 2014;99:202-207)。類似の異常は肺癌の一部にも認められ、ALK蛋白のキナーゼドメインを標的としたクリゾチニブという分子標的治療薬がすでに承認されていましたが、急性骨髄性白血病には未承認でした。そこで我々は、病院の倫理委員会の承認と患者さん・ご家族の書面による同意を得たうえで、この患者さんにクリゾチニブを投与しました。その結果、白血病細胞は速やかに減少し、投与開始3か月後には完全寛解状態に至りました。治療開始前には赤血球と血小板の輸血が必要でしたが、治療開始後には輸血の必要もなくなりました。我々は、この治療経過を第73回日本癌学会学術集会と第76回日本血液学会学術集会で発表し、さらにイギリスの白血病専門誌に論文発表しました(Leukemia, 2014;28:1935-1937)。

MLL遺伝子が関与する白血病

 11番染色体q23に座位するMLL (mixed lineage leukemia)遺伝子を切断点とする染色体転座は、乳児・小児と成人の急性骨髄性白血病・急性リンパ性白血病や、トポイソメラーゼⅡ阻害剤の暴露に伴う治療関連白血病に認められます。我々はGバンディングとMLL dual-color break-apart probeを用いたFISHを用いてMLL転座白血病症例を蓄積してきました。今回は新たにGAS7 (growth arrest-specific 7)遺伝子との相互転座t(11;17)(q23;p13)を見出しました(Tenri Medical Bulletin, 2014;17:72-80)。一方、急性骨髄性白血病や骨髄異形成症候群の一部にはMLLの遺伝子増幅が認められることがあります。我々はFISHを用いて、del(5q)を伴い治療抵抗性であった急性骨髄性白血病症例にMLL遺伝子増幅を見出しました(Tenri Medical Bulletin, 2014;17:43-45)。

Cell-based assayを用いた抗アクアポリン4抗体陽性視神経脊髄炎の診断

 アクアポリンは細胞膜に存在し、水分子が通過するチャンネルとして働いています。アクアポリン4は中枢神経に豊富に存在し、脳や脊髄と血液の間の水の出し入れに関わっています。視神経脊髄炎(neuromyelitis optica; NMO)は、アクアポリン4に対する自己抗体が病態に関与していると考えられています。我々は、アクアポリン4を強制発現させたHEK293細胞を用いたcell-based assay系を確立し、患者血清中の抗アクアポリン抗体を測定しています。2008年から2012年までにNMOと診断された9例中7例(77.8%)が抗体陽性であったのに対し、多発性硬化症17例中には陽性例を認めませんでした。この結果から、NMOは多発性硬化症とは異なる独立した疾患であることが明らかになりました。

造血幹細胞移植の支援

 通常の化学療法では治癒が期待できない造血器腫瘍(白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫)の患者さんに対して、自家幹細胞移植を併用した大量化学療法や、同種造血幹細胞移植(移植片は骨髄、動員末梢血幹細胞、臍帯血の3種類です)が行われます。重症再生不良性貧血の患者さんも同種造血幹細胞移植の対象になります。医学研究所は、フローサイトメトリーおよびコロニー形成試験によるCD34造血幹細胞の評価、自家造血幹細胞の凍結保存・融解処理、同種移植片の生着を確認するキメリズム解析などを担当し、造血幹細胞移植治療を支援しています。

神経生理機能の術中モニタリング

 神経生理機能検査は、神経に電気刺激を加え、その反応(活動電位)をみることによって神経の機能を調べる方法です。天理よろづ相談所病院では、脳外科手術を受ける患者さんが、手術によって重要な神経が損傷されないかどうかを監視するために、術中に神経機能をモニタリングしています。1年間の実施件数は約150件に上ります。

癌生存分析のためのプログラムの開発

 最近注目されていることは、癌治療の進歩により、延命するだけでなく、全治する患者さんが増えてきたことです。一般に延命療法と全治療法との間には何十年という余命の差が生じますので、両者を見分けることが必要となります。ところが従来から統計学者が推奨してきた方法(Coxの比例ハザードモデル)では、治療で癌が全治するか、延命だけに終わるかは予測できません。これを可能にするのはパラメトリック治癒モデル(Boagモデル)であることを、アメリカのGamel教授らが気付きました。ただこのモデルが正しいことを検証するためには、患者さんが亡くなられるまで追跡することが必要です。本院の診療情報課(病歴室)では主要な癌のため入院治療を受けた患者さんを、退院後も追跡調査しています。更に入院カルテも、退院後5年間だけ保存することが法律で義務付けられていますが、本院では約1万平方メートルという広大な資料保管場所を備え、開院から40年後の現在に至るまでの入院記録を保存しています。こうした長期追跡データを複雑な数式を用いて分析することによってはじめて信頼性のある長期予測が可能となります。我々は30年以上の長期の追跡調査を行った千例を超える胃癌患者さんのデータを分析した結果、Boagモデルが長期予測にほぼ妥当であることを確かめました。その結果は米国臨床腫瘍学会(ASCO)などが後援する2011年国際消化器癌シンポジウムで発表しましたが、同時にそのコンピュータプログラムをCDの形にして参加者に無料配布しました。

医学研究所業務件数

年度 染色体・FISH検査 遺伝子検査 フローサイトメトリー 造血幹細胞処理関連 電子顕微鏡
2012 678 488 769 17 104
2013 722 546 908 15 120
2014 665 522 758 20 108
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