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医学研究所
研究と関連した話題

 1999年日本の胃癌外科医を震撼させる論文が、世界のトップジャーナルと自他共に認めるNew England Journal of Medicineに発表されました。その著者はvan de Velde教授をリーダーとするオランダの胃癌グループであり、その内容は日本が推奨する胃癌の手術法(リンパ節を広く郭清するD2手術)が米英で常用されるリンパ節の限定的郭清(D1)手術と比較すると、日本の方が手術死亡率も合併症発生率も有意に高い上に、癌再発率には有意差はみられないという衝撃的報告でした。その結果彼らは日本のD2手術は常用すべきではないと結論しました。これは胃癌手術を日本のお家芸と自負する我々外科医にとっては信じがたい結果でした。
 そこで我々はオランダで手術指導を行った国立がんセンターの笹子部長(現兵庫医大教授)とvan de Velde教授に依頼して、問題のデータを借用し、Boagモデルを用いて再解析を行いました。その結果はまったく逆であり、日本の推奨するD2手術では既に術後6年の追跡でも再発がD1よりも約10%低く、その差は有意でした。この成績は直ちにvan de Velde教授に知らせると同時に、教授の許可を得て1999年12月18日大阪で行われた癌の臨床研究・生物統計研究会(古河会長)で発表しました。しかし2004年のJournal of Clinical Oncologyに彼らが発表した論文を見ると、依然としてD1とD2間に差を認めませんでした。日本でもこの結果に基づき、オランダの報告を支持する統計学者が現れ、これを見過ごせば、日本のD2手術が軽視される恐れが生じました。そこで我々の解析結果を国際誌に発表する許可をvan de Velde教授に求めましたが、データの利用は一切許可しないという返事でした。
 ところが意外なことに昨年のLancet Oncologyで初めて彼らは日本のD2手術がD1よりも再発が平均11%低いことを正式に認めました。これは実に術後15年のことであります。これはたとえランダム化臨床試験という、証拠に基づく医療を行ったとしても、モデルの選び方によって結果が大きく左右される一例といえます。我々はGamel教授と共著で英国のSurgical OncologyにCoxのモデルの問題点をeditorialとして投稿し、統計学者の意見を求めました。その結果は予想外であり、Cox自身は自分の提唱したモデルにも限界のあることを率直に認めました。これには我々も深い感銘を受けました。
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