消化器外科
研究と業績
論文・学会発表
患者の皆様へのお知らせとお願い
研究内容に関するお問い合わせは、各研究担当者までお願いいたします。
管理番号 | 診療科 | 研究名 | 研究内容 |
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臨24-31 | 消化器外科 | 肝切除後肝不全に対する新規予測モデルの検証 | 詳細PDF |
臨24-24 | 消化器外科 | 腹会陰式直腸切断術における創部感染予防の工夫 | 詳細PDF |
中24-24 | 消化器外科 | 術前画像パラメーターに基づいた膵体尾部切除後膵液瘻の予測モデルの検証 | 詳細PDF |
臨24-18 | 消化器外科 | 大腸癌肝転移に対する周術期化学療法の有用性の検証 | 詳細PDF |
中24-19 | 消化器外科 | 術前治療後に切除し病理学的完全奏効(pCR)であった膵癌症例における臨床病理学的意義の検討 | 詳細PDF |
中24-18 | 消化器外科 | 80歳以上の高齢鼠径ヘルニア患者に対する至適手術治療の検討 | 詳細PDF |
中942 | 消化器外科 | 京都大学外科関連多施設における胃癌手術レジストリ | 詳細PDF |
中24-11 | 消化器外科 | 腹腔鏡下右側結腸切除の安全性に影響を与える因子に関する前向き観察研究 | 詳細PDF |
中24-05 | 消化器外科 | 胃癌に対するロボット支援手術と腹腔鏡下手術の中長期成績に関する多機関共同後ろ向きコホート研究 | 詳細PDF |
中24-01 | 消化器外科 | 外科的切除を施行した大腸癌腹膜播種における周術期化学療法の有効性の検討 | 詳細PDF |
臨23-08 | 消化器外科 | ERCP関連消化管穿孔に対する治療指針の検討 | 詳細PDF |
中23-08 | 消化器外科 | 胃癌根治術後の栄養状態の変化と予後に関する多機関共同研究 | 詳細PDF |
中23-07 | 消化器外科 | 膵切除後合併症に対する再手術症例の検討 | 詳細PDF |
1432 | 消化器外科 | 偶発胆嚢癌に対する多機関共同後ろ向きコホート研究 | 詳細PDF |
1301 | 消化器外科 | 胃癌における予後因子と適切な治療戦略の検討 | 詳細PDF |
1298 | 消化器外科 | 切除可能進行食道癌に対する術前FP療法と術前DCF療法における治療成績の比較 | 詳細PDF |
臨床研究、臨床試験への協力のお願いについて
医学は常に進歩しています。新しい薬、手術機器、技術などが、日進月歩で開発されてきています。しかし、「その治療が患者さんに本当に安全で、有益なのか?」を見極めることは決して簡単なことではありません。新しくて一見良さそうに見える治療法であっても、 実際には、従来の治療に比較して効果が低かったり、思ったよりも副作用が強かったりすることはよく経験されることです。多種多様の治療方法の中から、どれが、最も患者さんを治療するに当たって有効であるかどうかを確かめるために行われるのが臨床研究や臨床試験です。現在に至るまで、日本中、世界中で多くの臨床試験が行われており、医学の進歩につながっています。今、私たちが、患者さんに行っている治療法は原則として、「治療ガイドライン」というものに従っていますが、そのガイドラインは世界や日本で行われた数々の臨床試験の結果に基づいて作成されています。
「臨床試験」というと堅苦しく、「人体実験」という言葉を思い浮かべる方もおられるかもしれません。しかし、「臨床試験」の目的は、複数の患者さんに、ある新しい治療を、「プロトコール」という決まりごとに従って同じように行って、その治療の効果を評価することです。臨床試験の内容によっても異なりますが、当科で行っているものの場合には、通常その治療は保険適応となっているもので、日常でもすでに行われており安全性に関してもある程度定まったものであり、いわゆる「新薬」の治験と呼ばれるものとは異なります。臨床試験は、われわれの施設単独で行われるものもありますが、ほかの多くの施設との協同で行われるものもあります。
当科では医学の進歩につながる医学研究を積極的に行っていくのが施設としての責務と考え、全国規模の臨床試験や京都大学との共同による臨床試験に参加しています。当科にてのご加療を希望される患者さんには、主治医から臨床試験への参加を依頼させていただくこともあるかと思いますが、当科のそのような社会的役割を御理解いただき、ご協力いただければと願っております。なにとぞ宜しくお願い申し上げます。
現在当科で行っている臨床試験は以下の通りです。
胃疾患
- StageⅢ胃癌に対する術前ティーエスワン+シスプラチン併用化学療法の第Ⅱ相臨床試験(KUGC-03)
- 消化管間質腫瘍(GIST)患者を対象としたイマチニブによる術後補助療法の1年間投与と6ヵ月間投与のランダム化第Ⅱ相試験(近畿GIST研究会)
大腸疾患
- 腹腔鏡補助下大腸切除術における予防的抗菌薬投与法設定の為の無作為化比較試験 第Ⅲ相試験(JMTO-prev07-01)
- StageⅢ結腸癌治癒切除例に対する術後補助化学療法としてのUFT/Leucovorin療法とTS-1療法の第Ⅲ相比較臨床試験(ACTS-CC)
- StageⅡ大腸癌に対する術後補助化学療法に関する研究第Ⅲ相臨床試験(SACURA)
- 術後補助化学療法におけるフッ化ピリミジン系薬剤の有用性に関する比較臨床試験(治癒切除直腸癌に対するUFT 療法とTS-1 療法との比較検討)(ACTS-RC)
- 切除可能大腸癌肝転移症例に対する術前m-FOLFOX6療法 Feasibility Study
膵臓の手術後に起こる合併症を予測し、安全な治療へ
膵臓の腫瘍に対する「膵体尾部切除術」は、膵臓の一部を切除する一般的な手術方法です。しかし、この手術後には「膵液瘻(すいえきろう)」と呼ばれる合併症が発生することがあります。これは、膵液が漏れ出すことで炎症を引き起こし、重症化すると追加の治療が必要になることもあります。そのため、膵液瘻を事前に予測し、リスクを低減することが重要です。
私たちの臨床研究(管理番号:中24-24)では、手術前の画像検査(MRIやCT)から膵液瘻のリスクを予測する新しい方法を開発しました。特に、「膵臓の厚さ」と「MRI画像の信号の強さ」の2つの指標を組み合わせることで、より高い精度でリスクを評価できることが分かりました。さらに、手術中に使う「ステープラー(自動縫合器)」の選択や圧縮時間を考慮することで、より安全な手術が可能になることが示されました。
この新しい予測モデルを活用することで、膵液瘻のリスクが高い患者さんを事前に特定し、適切な手術方法を選択することができます。これにより、合併症を減らし、より安全な治療につなげることを目指しています。詳しい情報や予測モデルの詳細については、以下のリンクや論文をご覧ください。
補足) Signal Intensity of Pancreas, Signal Intensity of Muscle: MRIにおける膵臓と筋肉の信号強度, Thickness of Pancreas: CTにおける膵臓の厚さ(mm)
引用元) Morino K, et al. Proposal of the Novel predictive model for Postoperative Pancreatic Fistula in Distal Pancreatectomy for Pancreatic Tumor Based on Preoperative Imaging Parameters and Stapler Handling. World J Surg. 2024;48(4):932-942.
肝切除後の肝不全を防ぐための新しい予測モデルについて
肝切除手術は、肝臓がんや転移性肝腫瘍などの治療に有効ですが、手術後に「肝不全」と呼ばれる重い合併症が発生することがあります。特に、もともと肝機能が低下している方や、大きな範囲の肝臓を切除する必要がある場合には、術後の肝臓の回復が十分でなく、肝不全のリスクが高まります。この合併症は、術後の回復に大きな影響を与え、場合によっては命に関わることもあります。
私たちの臨床研究(管理番号:臨24-31)では、肝切除後の肝不全を予測し、より安全な治療へとつなげる新しい方法を検証しました。過去の手術データをもとに、血液検査などの数値を組み合わせた「予測モデル」を作成し、手術前に肝不全のリスクを評価できるようにしました。特に「ALPLat」という指標が高い予測精度を持つことがわかり、これを活用することで、術後のリスクに応じた適切な治療を早期に行うことが可能となりました。
この研究を通じて、肝切除を受ける患者さんがより安全に手術を受けられるようになり、術後の回復をスムーズにすることを目指しています。詳しい情報や予測モデルの詳細については、以下のリンクや論文をご覧ください。
補足) Platelet count, Albumin: 術前の血小板数とアルブミン値, FLR: 術前CTによる予測残肝率, Blood loss: 出血量, Number of Pringle Maneuver: 肝阻血(プリングル法)の回数
引用元) Morino K, et al. Impact of the Intermittent Pringle Maneuver for Predicting Post-hepatectomy Liver Failure: A Cohort Study of 597 Consecutive Patients. World J Surg. 2023;47:1058-1067.
消化器外科 ロボット支援下胃がん手術(da Vinci Surgical System)
当科では手術支援ロボットであるda Vinci Surgical System(Intuitive Surgical社、以下da Vinci)を用いた胃がん手術を行っています。
da Vinciは米国を中心に普及しており、米国では前立腺がん手術の約90%がda Vinciで行なわれています。近年日本でも泌尿器科領域においてda Vinciによる前立腺がん手術が保険収載されたことを受けて急速に普及しつつあり、当院でも2014年より稼働しています。限られた施設ではありますが、消化器外科領域や婦人科領域においても適応が拡がりつつある状況です。
da Vinciを用いた手術は従来の腹腔鏡手術に比べて術野の3D化、手ぶれ補正、手術鉗子の多関節化など様々なメリットがあるため、術者はより実際の視野に近く自由な操作性で手術を進めることができます。それらの恩恵を受けてより緻密かつ繊細で安全な手術が可能になると期待されています。当科では従来より胃がんに対する腹腔鏡下手術に積極的に取り組んでおり、根治性を失わずにより低侵襲な手術を実施できるよう心がけていますが、さらなる安全性、根治性、低侵襲性の追求のためda Vinci手術を導入いたしました。
現在、da Vinciを用いた胃がん手術(ロボット支援下胃がん手術)が先進医療として国内施設で臨床試験が進んでいる背景もあり、当科においても2016年8月よりStageⅠの胃癌を対象にロボット支援下胃がん手術を開始していますが、今後は進行度の高い胃癌に対しても適応を拡大していく予定です。
当院では胃がんに対する手術は年間約110件行っておりますが、ロボット支援下胃がん手術の執刀はda Vinciの使用を正式に認められた医師が行います。 ロボット支援下胃がん手術は現在はまだ保険医療の適応がないため手術を受けられる方には若干の自己負担分をお願いしておりますが、詳細については担当医(水曜外来:門川)にお尋ねください。